春…寒い冬が明けて多くの登山者が動き出す登山シーズンですが、花粉症の方にとっては辛い時期ですよね。
特に、登山初心者でも登れるような春の山(主に低山)は、花粉の原因である杉林ばかり…。
今回は「花粉症が辛いけど登山に行かないと気が済まない!」という方に向けて、花粉症でも出来るだけ春の登山を快適に楽しむための対策を紹介していきます。
一説によると、花粉症は許容量を超えると誰もがかかる恐れがあると言われるアレルギー症状です。花粉症でない方でも対策をしないで花粉の多い山を呑気に歩いていると発症する恐れがあります。
すでに花粉症をお持ちの方向けの記事ではありますが、そうでない方もぜひ参考にしてみてください。
花粉症の原因
花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー反応で、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が挙げられ、春先には多くの花粉症患者が頭を悩ましているかと思います。
上記の症状以外にも頭痛や倦怠感なども発症する恐れがあり、登山に影響を及ぼす可能性もある花粉症。
花粉症対策で大切なことの1つとして、自分が何の花粉でアレルギー反応を起こしているのか、その花粉のシーズンはいつなのかをしっかり知ることです。
花粉症をすでに発症している方はその辛い症状に対抗するため、自分の原因は知っている方も多いかと思いますが、一度おさらいしておきましょう。
自分が何の花粉でアレルギーを起こしているか知ることが重要
花粉症を発症する花粉の種類は50種類以上あるとされ、一般に最も多い花粉症はスギ、ヒノキを原因とする花粉症です。
他にもシラカンバやケヤキ、コナラなどの樹木、ブタクサやヨモギなどの草本が花粉症の原因となることが多いです。
全国の森林の18%、国土の12%をスギ林の面積が占めているためか、花粉症患者の約70%がスギ花粉が原因。次いでヒノキ科花粉症患者が多いとされています。
スギ花粉症の人の約7割はヒノキでもアレルギー反応を起こすとされているので注意が必要です。
自分がどの季節に症状が出るかで、おおよその原因となる花粉を特定出来ますが、耳鼻咽喉科やアレルギー科などの専門の医療機関でどんな花粉で発症しているかを精密に検査することをおすすめします。
地域によっては眼科や内科でもアレルギー検査が可能なところもあります。お近くの病院の情報をチェックしてみてください。
主な花粉の飛散シーズン
花粉は種類により飛散する時期が違います。主な花粉のシーズンは以下の通りです。
上記は関東エリアの花粉飛散時期をカレンダーにしたものです。飛散量が多いほど濃い色で表しています。
飛散時期のピークはスギ(2〜4月)、ヒノキ(3〜5月)、ブタクサ(8〜10月)、ヨモギ(8〜10月)と、ほぼ年間を通して何らかの花粉が飛散しています。
多くの花粉症患者の原因であるスギやヒノキは、2〜5月の春登山シーズンに被ります。
春の低山では梅や桜などが咲き、気温も比較的安定するので登山初心者におすすめの登山シーズンですが、花粉症をお持ちの方には辛い季節になります。
そんな花粉が多く飛散する春ですが、地域によって飛散の開始時期が違ったり、年によって飛散量が変わってきます。
花粉は前年夏の気象条件や、スギ雄花の花芽調査で翌年の飛散量を推測することができ、毎年12月には日本気象協会が翌年の花粉飛散予測を発表しています。
日本気象協会のサイトではスギ花粉の全国の飛散開始時期や花粉飛散量が分かりますので、春の登山へ行く場合はこの情報を活用して、花粉を上手く避けるように登山計画を立ててみると良いでしょう。
花粉症、都市部より山の方がマシ説
面白いことにスギの人工林の面積が少ないはずの都会のほうが、地方よりも花粉症患者の割合が多いとの調査結果があります。
都会では排気ガスや建材に使われているホルムアルデヒドなどの大気汚染物質(アジュバンド物質)が多く、それが花粉に付着することでアレルギー症状をより悪化させています。
排気ガスが多い地域では少ないところに比べて約2倍もアレルギー症状を悪化させると言われています。
また、山では花粉が土に吸収され再飛散されにくいとされますが、地面がアスファルトやコンクリートが大半の都会では地面に吸収されず、風を受けて何度も舞い上がり大飛散しやすいため花粉症の症状が出やすいとされています。
もしかしたら、花粉を怖がって登山に行かず都会で過ごすよりも、山に登った方が症状が楽だったりするかもしれません。
春の登山でやるべき花粉症対策
ここからは、本題の春の登山でやるべき花粉症対策を紹介していきます。
しかし花粉は凶悪なもので、対策を取ったとしても完全に症状を抑えることは出来ません。
今回紹介する対策も花粉を完全に遮ることは出来ないですが、症状を出来るだけ抑えて比較的快適に登山ができるようにするものになっています。
ぜひ参考にしてみてください。
①花粉の少ない山を選ぶ
登山計画の段階で花粉の少ない山選びをすることは花粉症対策として有効です。
先ほど説明したように花粉の飛散時期や量は地域によって違うので、花粉飛散予測を参考にしてみると良いでしょう。
しかし、登山始めたての人や初心者が登れるような春の山(主に低山)で、スギやヒノキが少ない所は残念ながらそう多くありません(むしろほとんど無いかも…)。
そういった低山は花粉のピークを避けて登りに行くのが望ましいですが、どうしても行きたい方は下記で紹介する対策をバッチリと講じて、覚悟したうえで行ってみてください。
花粉の量は「時間帯」が大きく関係している
登山の鉄則として“早出早着”という言葉がありますが、花粉が多い時期にコースタイムの短い低山に行く場合は例外として、少し遅めの出発を推奨します。
というのも、スギ花粉は朝日を浴びてから放出され、日中に平野部に飛散します。
つまり、山では早朝を過ぎると飛散している花粉は少なくなり、花粉症の症状が軽く済む可能性が高くなるのです。
花粉の多い低山に行く場合は「時間帯」も気にしてみましょう。
標高が高い山や岩が多い山では花粉が比較的少ない
春の高山は残雪期と言われ、5、6月まで雪が残っているところがあります。雪があるところでは湿度によって花粉が重くなり、飛散しにくくなる特徴があります。
また、そういった高山では山の中腹を抜けると森林限界のために杉林がなくなったりするので、標高を上げると花粉の影響を受けにくいとも考えられます。
岩の多い山では、そもそも木が少なかったりするので花粉量が少ないと考えられます。
しかし、春の高山は雪山装備が無いと登れないですし、岩の多い山は歩行技術がないと滑落の危険性があります。そういう山に行く場合は、経験者に同行してもらったり装備が揃ってから登りにいきましょう。
登山を始めてから6年間、これまでスギやヒノキの多い山もたくさん登ってきたが花粉症を発症することはなかった。
しかし登山7年目、スキー場で働いていた時にそれは起きた。
そのスキー場のゲレンデ下部には多くの杉が生えていた。
2月ごろから周りの人は花粉症の症状を訴えていたが、私は花粉症を持っていないからと辛い症状も感じず、対策もせずに悠々と滑っていた。
ところが3月に入って少しすると突然、そのスキー場に行く度にくしゃみが止まらなくなったのである。
くしゃみだけではない。鼻水も止まらないし、目が痒くてたまらない。完全なる花粉症だった。
山間部や雪があるところでは花粉症になりにくいという情報はなんだったんだ…と思いつつ、その年は単純に花粉を浴びる量が多かったので仕方ないとも思った。
そんな辛い中でも面白い発見があった。リフトでちょっと標高を上げると花粉症の症状が治まるということだ。
先にも説明したように、雪があり杉林が無くなる標高が高いところはやはり症状が出にくいらしい。
これを書いている今、もう少しで花粉症2年目の年が始まる。「花粉症は夢であった」と願いつつ、もし症状が出たら標高の高い雪山に逃げようかと思う。
花粉の飛散量が多くなる4つの気象条件に要注意!
一般的に花粉が飛散しやすい気象条件として晴れて暖かい、風が強い、乾燥している、雨の翌日の4つが挙げられます。
晴れて暖かい日は絶好の登山日和ですが、特に最高気温が15℃以上になるような日では花粉が多く飛ぶので、花粉症の方にとっては辛い1日となります。
症状が辛い方は、あえて曇りの日を狙ってみるのも良いかもしれません。曇りは曇りの日なりの良さがありますよ。
また、他に挙げた3つの天気の時も注意が必要です。
これらの情報は山の天気予報サイトなどで確認することが出来ますので、計画を立てる際に参考にすると良いでしょう。
②花粉症の薬を飲む
花粉症ではアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬が処方され、薬を服用することは花粉症の対策として最も有効な手段の一つであります。
花粉症の薬は毎日飲むことで十分な効果を発揮するものなので、登山当日にも飲むことになりますが注意点があります。
それは、副作用として眠気やふらつきが出ること。
これらの副作用が出ると、集中力が途切れて転倒や滑落などに繋がる恐れもあるので、登山では致命的です。
最近メインで使われている第二世代抗ヒスタミン薬は、眠気を出しにくくしている薬になっているようですが、それでも人によって副作用の出方は変わってきます。
登山当日に服用するまでに、普段から2週間ほど服用して異常がないかチェックしておきましょう。
対処療法にはなりますが、症状が軽く普段から花粉症の薬を服用していない人であれば、点鼻薬や点眼薬だけでも症状が緩和されながら眠気が出る心配もなく、比較的楽に登山をすることができるでしょう。
③ワセリンを塗る
ワセリンを塗る方法は、マスクをすると息苦しくて登るのが大変という方におすすめの方法です。
花粉は空気中に浮遊しているものがダイレクトに鼻や目に飛び込むことが多いですが、顔に付着した後に吸引されることもあります。
ワセリンは石油を精製したものでペタペタしています。このペタペタが付着する花粉をキャッチして体内への侵入を防ぐ効果があります。
主に目や鼻の周りに塗るようにしようしますが、症状がひどい場合は鼻の中に塗ることも良いとされています。鼻の中に塗る場合は、綿棒などで苦しくない程度に塗りつけると良いでしょう。
また、ワセリンは体温で溶けるため、歩いて体温が上がる登山では塗りすぎるとベタついたり、汗と一緒に流れ落ちて花粉症どころではなくなる可能性もあります。ワセリンのつけ過ぎには注意しましょう。
④花粉対策グッズを使う
マスクは花粉症対策の要
マスクは花粉症対策として欠かせないグッズです。
通常のマスクでも花粉を約70%、花粉症用のマスクでは約84%もの花粉を減少させる効果があるとされています。
しかし、市販の不織布マスクだと蒸れて結露したり、呼吸が苦しかったりして登山にはあまり向きません。
最近では、新型コロナを受けて多くのアウトドアブランドでマスクが販売されています。
花粉症カットだけでなく、通気性や速乾性に優れていたり、ズレ落ちないようにアジャスターが付いているものなど、登山で使いやすいものがたくさん出ています。
不織布マスクだと苦しいという方はぜひ使ってみてください。
メガネやサングラスで眼を守る
目のかゆみが辛い人は、メガネやサングラスをすることがおすすめです。
メガネを使用することで、使用しない場合に比べて眼に入る花粉量は40%減少し、レンズ周りにカバーがついたものだと65%も減少すると環境省が発表しています。
コンタクトレンズをしている方は、花粉によりアレルギー性結膜炎の症状を悪化させる可能性があります。花粉症の季節はメガネに変えた方が良いでしょう。
花粉の付きにくいウェアを選ぶ
3月4月だとまだ肌寒く、ウール素材や起毛しているフリースを着たい季節ですが、そういった素材は花粉が付着しやすいので出来るだけ避け、ツルツルとした化繊素材のウェアを着て行くと良いでしょう。
しかし、花粉が付きやすいウェアを着たからといって、吸い込む花粉の量が多くなるというわけでは無く、落としにくいため家に持ち帰ってしまう可能性があるというだけです。
まだウェアが揃っていない初心者だと、急いで買い足さなければいけなかったりと大変かと思いますので、無い場合はあまり気にしなくても大丈夫です。
もしフリースなどを着て行く場合は、家に着いたら真っ先に着替えて洗濯し、家の中で花粉を広げないようにしましょう。
帽子も忘れずに被ろう!
忘れがちですが髪の毛にも花粉は付着します。帽子を被り、髪の毛に花粉が付くのを防ぐとよいでしょう。
その際、つばの広い帽子を被ることで顔に付着する花粉の量も減らしてくれます。
素材はウェアと同じく、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維が花粉が付着しにくくおすすめです。
+α | 下山後にもやっておくべき花粉症対策
花粉は体内に入るだけでなく、ウェアやザック、露出した体の部分にたくさん付着しています。
その花粉を取り除かないままでいると、花粉が少ない屋内などでも吸い続けることになり、花粉症が悪化する恐れがあります。
家や車内などに花粉を持ち込まないためにも、下山したらすぐに花粉を落とすようにしましょう。
①洗顔、うがいをする
花粉は目の周りや鼻の周り、鼻腔内に多く付着します。顔を洗ったりうがいをすることで、吸入する花粉の量が減るので症状が楽になります。
帰宅後だけでなく下山後すぐ、もしくは登山中に綺麗な沢や水場があれば行うと良いでしょう。
ただし、沢や山中の水場の水には細菌や細かなゴミが入っていることが考えられます。その水で目の中を洗うと感染症や傷つけてしまう恐れがあるので、痒くても目の中を洗うのは控えましょう。
②下山後に花粉を落とす
下山後にウェアやザックなどに付着した花粉をできるだけ落とすようにしましょう。
その際、勢いよくはたいたり振ったりすると舞い上がった花粉を吸い込むことになるので、そっと払うようにしましょう。
また、ウェットティッシュなどで優しく拭いてあげると、花粉が舞うこともないのでおすすめです。
下山後に落としたとしても、花粉が多い時期は帰宅中に再びたくさんの花粉が付着します。家に入る前にもう一度花粉を落とすことをお忘れなく。
③お風呂に入る
髪や顔など体に付着した花粉を落とすにはシャワーやお風呂が効果的です。
シャワーを浴びることで体に付着した花粉のほとんどを落とすことが出来ます。この時、シャワーを鼻の穴の中まで入れると鼻に付着した花粉も洗い落とせるのでおすすめです。
家に帰ったらすぐに入浴しましょう。
「湯気」にも花粉症の症状を和らげる効果があるとされています
湯気を吸い込むことで鼻腔内が潤い、付着している花粉を排出しやすくしたり、一時的に鼻づまりを改善してくれる効果が期待できます。
また、一般的な花粉症対策としてアレルギー症状を悪化させないために体調を整えることが重要であることが知られています。
下山後に温泉に行く方も多くいるかと思いますが、温泉には疲労回復効果があり登山の疲れを癒すことが出来るだけでなく、結果として花粉症対策にも繋がっています。
下山後、近くに温泉がある場合は立ち寄ってみると良いでしょう。
入浴の際に注意していただきたいのは、シャワーやお風呂の湯を熱くしすぎないこと。
42℃を超える熱いお湯に入浴するとアレルギー症状を悪化させるヒスタミンという化学物質が体内で生成されてしまうので、お湯の温度には気をつけましょう。
おわりに
以上、春の登山でしておきたい花粉症対策まとめでした!
花粉症の方は春の(低山)登山は出来るだけ控えた方がいいのですが、どうしても登りたい方は今回紹介した対策をとり、万全な装備で登山を楽しみましょう。
対策をしっかりして登山に行けば、都市部にいるよりも案外楽かもしれませんよ。
それでは、おしまい!
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