漫画「神々の山嶺」は原作が小説であり、小説・漫画ともに受賞作品、映画化もされている人気の作品です。
登山が題材の漫画でありながらまだ読んだ事がなく、2022年にアニメ映画が上映されるということで、これをキッカケに読むことにしました。
この作品の魅力、語っていきます。
漫画「神々の山嶺」はどんな作品?
作品名 | 神々の山嶺 |
作者 | 作・夢枕獏/画・谷口ジロー |
出版社 | 集英社 |
掲載誌 | ビジネスジャンプ(1985~2011) |
巻数 | 全5巻 |
元々は作家・夢枕獏による小説であり、のちに「孤独のグルメ」で知られる谷口ジローが加筆・漫画化したものがこの「神々の山嶺」です。
2016年に平山秀幸監督、阿部寛・岡田准一出演の実写映画化もされました。
また、2021年にフランスでアニメ映画化がされ、第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞し、2022年夏に日本で公開が決定した、話題再燃中の登山漫画です。
「神々の山嶺」のあらすじ・概要
日本からエヴェレスト登頂を目指す登山隊のカメラマンとして同行した深町誠。
その登山は滑落死2人を出して失敗に終わる。
その後、写真集の撮影のため1人ネパールに残る深町は、首都カトマンズの古道具屋「サガルマータ」(エヴェレストを意味する)で年代物のカメラを目にする。
「どうしてこんなものがここに?」
そのカメラは、1924年、エヴェレスト山頂付近で消息を絶ったとされる実在したイギリスの登山家、ジョージ・マロリーがエヴェレスト登山時に所持していたカメラと同機種のものだった。
このカメラがマロリー本人のもので、登頂時の写真が残っていればヒマラヤの登山史が大きく書き換えられる。
そう思いカメラを購入した深町は、そのカメラを巡りある1人の男と出会う
登山界の一匹狼として名を馳せ、ヒマラヤで消息を絶ったとされる孤高のクライマー、羽生丈二だ。
なぜ彼がこのネパールの地にいるのか。
一度は日本に帰国する深町だが、羽生のことが気になり足取りを追う。
調べていく中で知る、羽生丈二という男の壮絶な登山人生。それから導き出された彼の目論見…
エヴェレスト最難関ルート「冬季エヴェレスト南西壁無酸素単独登頂」
羽生はなぜ山に登り続けるのか。そして、カメラの真実とは。
人生を山に捧げた羽生とその男を追い求めた深町が繰り広げる壮大な物語。
あらすじはこのような感じです。
物語の始まりはカメラであり、しばしばこの謎を追い求める話として紹介される事があるようだが主題は「羽生の人生」でしょう。
「神々の山嶺」の魅力と感想
深い・重い・熱い
決して軽い気持ちで読む漫画ではなかった。
読み終えた後の疲労感はひとつの山を登り終えたようなものだった。しかしそれに加えて、心には熱いものが刻まれた。
これも原作が小説であるからだろうか。
漫画の巻数は5巻と短いが、羽生という男の壮絶な人生が緻密に描かれており、内容がとても濃く感じられた。
また、カメラマン深町のちょっとしたクズ男感も羽生を引き立たせるスパイスになっていて良い。
羽生の性格・人生は狂気に満ちている。
常人では考えられないルートの登山・クライミングをやってのける一方、相手の気持ちに寄り添う事が出来ないその性格で、周りの人々は遠ざかっていった。「天才」とはこういう人間のことを言うんだろう。
それでも、何か1つのもの(登山)に全うする生き方はかっこいいと感じる。
現代ではたくさんのもので溢れ、生き方にも色々な選択肢がある。
「世界初」「偉業」なんてのは稀で、これらを達成するには困難が付き纏う。
今の世界では「辛かったら逃げていい」という考えが染み付いて、自分の生きやすい方へと舵を向ける人が多い。
この考え方が合っている、間違っているとは言えない。
自分も色んなものから逃げて生活している。
だからなのか、羽生の「山にひたすらに向き合い逃げなかった人生」がカッコよく見えた。
心理学者ユングは「人生は山登りに似ている」という言葉を残しているが、この漫画はその「人生は山登り」と「山登りあっての(羽生)の人生」の登山≒人生が上手く絡み合って描かれており、深くて熱い作品になっているのだと感じた。
山への憧憬・畏怖
みんなが「登山がしたくなる」漫画、とは言えない。
主な舞台は「ヒマラヤ」で、世界でも類を見ない過酷な環境がメインで描かれており、作中では死者や怪我の描写もある。
天才クライマー羽生ですら、山への怖さからくる震えにも捉えられる描写もある。
これだけを見たら登山へ行く気持ちは出ない。
ただ同時に、登山をしている人なら誰しもが憧れる世界がある。
そして、登り切った時の達成感、死と隣り合わせの時に感じる「自分は今、生きている」という感覚も忠実に描かれているので、山の存在を大きく感じる漫画になっている。
さいごに
登山を題材にした漫画ということで手に取ってみたが、非常に深い作品でした。
私自身登山をするのだが、その登山の在り方、更に言うと自分の人生を見直す、そんな一冊になりました。
気になった方はぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。
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