夏は絶好の登山シーズンであるが、虫も活動が盛んな時期。
「夏に登山に行きたいけど、虫が嫌だから行けない…」なんて方もいるのではないでしょうか。また、登山で出会う虫はうっとうしいだけでなく、吸血したり刺してくる可能性も。
そんな虫たちから身を守り、快適に登山をするのに虫除けは必須アイテムです。
虫除けと言ってもたくさんの商品が販売されており、どれを選んだ良いかわからないという方も多いかと思います。
そこで今回は、登山で出会う虫に対して効果のある成分なども紹介しつつ、登山に持っていきたい虫除け全7アイテムを紹介していきます。ぜひ、参考にしてみてください。
登山に持っていく虫除けの選び方
一般的な外出とは違い、登山は自然の多い場所で行うアクティビティです。
普段、私たちが虫除けをする理由の大半は「蚊に刺されないため」だと思います。
しかし、山にはその蚊は少なく、ヤマビルやマダニ、メマトイといった、あまり目にしないような害虫が多く存在し、その虫からの被害を抑えるために虫除けをしていきます。
そのため、登山で使う虫除けを選ぶ際は山にいる害虫に効果があるのか、内容成分や濃度といった点を気にする必要があります。
①内容成分と濃度
虫除けは内容成分によって、忌避※効果のある害虫が変わってきます。また、濃度によって効果の持続時間も変わりますので、目安にして使うと良いでしょう
※忌避とは、「嫌って避ける」という意味。
ディート
ディートは日本で50年以上、世界で最も多く虫除けに使用されている化学成分です。
蚊、マダニ、ヤマビル、ブユ(ブヨ)、アブ、イエダニ、ノミ、トコジラミ、サシバエ、ツツガムシ
蚊やマダニなどメジャーな害虫のほかに、ヤマビルやブユ(ブヨ)など、登山で出会うような害虫にも効果を発揮してくれます。
ディートは毒性が低いとされていますが、高濃度での使用は稀に神経障害や皮膚炎を引き起こす可能性があるとされており、日本では濃度30%までに制限されています。
厚生労働省からは「濃度表示の義務化」や「小児(12歳未満)への使用時の制限」などの通達が出ています。
小児(12歳未満)に使用させる場合には、保護者等の指導監督の下で、以下の回数を目安に使用すること。なお、顔には使用はしないこと。
引用元:厚生労働省
・6ヶ月未満の乳児には使用しないこと。
・6ヶ月以上2歳未満は、1日1回
・2歳以上12歳未満は、1日1〜3回
この年齢制限は虫除けに使用されているディートの濃度によって変わってきます。濃度別の年齢制限、および持続時間の目安は以下の通りです。
分類 | 濃度 | 持続時間の目安 | 年齢制限 |
---|---|---|---|
防除用医薬部外品 | 10%以下 | 約3〜4時間 | 12歳未満は使用不可 |
第2類医薬品 | 12% | ・6ヶ月未満の乳児には使用しないこと。 ・6ヶ月以上2歳未満は、1日1回 ・2歳以上12歳未満は、1日1〜3回 | |
30% | 約5〜8時間 |
濃度が高ければ1回の使用で長時間の効果を保つことができるため、何度も塗り直すのが面倒な方には高濃度のタイプがおすすめです。(ただし、登山ではたくさんの汗をかき効果が落ちやすいため、高濃度でも塗り直すことを推奨します。)
肌の弱い方はパッチテストを行って、肌トラブルが無いことを確認してから使用すると良いでしょう。
イカリジン
イカリジンとは、1980年代にドイツで開発され、日本では2015年に認可されたばかりの虫除け成分です。
上述したディートには年齢制限や回数制限がありましたが、イカリジンにはその制限がなく、安心して使うことが出来ます。
分類 | 濃度 | 持続時間の目安 |
---|---|---|
防除用医薬部外品 | 5% | 約6時間 |
15% | 約6〜8時間 |
イカリジンもディートと同じく、使用している濃度が高い商品ほど持続時間が長くなっています。
蚊成虫、ブユ(ブヨ)、マダ二、アブ
ただし、ご覧の通りイカリジンの効果がある害虫は4種類と少ないです。
基本的な登山ではイカリジン使用の製品でも全く問題ありませんが、藪漕ぎを多くする場合や、ヒルが多い丹沢などの山域に行く場合はディートを使用した製品の方が良いでしょう。
また、ディートは顔には使用できませんが、こちらは顔への使用も可能ですので、使い分けても良いと思います。
天然由来成分
天然成分の虫除けには植物(主にハーブ)の精油が使われています。ハーブに含まれる天然由来の成分には虫が嫌がる香りがあり、古くから虫除けとして使われてきました。
この植物のみで作られたオーガニックな虫除け、いわゆるアロマ虫除けスプレーは人にも環境にも優しいのが特徴です。
また虫除け効果以外にも、香りでリラックスできたり清涼感があったりと、虫除け独特の使用感(匂い)が苦手な人でも使いやすいのが魅力です。
ラベンダー、ゼラニウム、レモングラス、ハッカ(ミント)、シトロネラ、ユーカリ、ローズマリー、ティーツリーなど
ハーブの虫除け効果は未だ正確には分かっていないようですが、主に蚊やダニ、ハエやゴキブリなどに効果があるとされています。
虫はこれらの植物の香りを嫌って逃げて行くので、香りを持続させる必要があります。アロマの虫除けを使用する際は、こまめにスプレーし直しましょう。
②携行性
市販の虫除けスプレーは、50ml程度の持ち運びに適したサイズから、200mlほどの大容量タイプまで、さまざまな容量の商品が展開されています。
登山では荷物が増えると体への負担が大きくなるので、なるべく重量を減らしたいところ。また、虫除けの使用頻度は比較的少ないので、登山に持って行く際はせいぜい100ml、出来れば100ml未満のコンパクトサイズがおすすめです。
また、スプレーボトルの形状も主に霧吹き型(ピストルタイプ)と、指で上から簡単にプッシュするフィンガースプレータイプの2種類があります。
ピストルタイプはザックの中で引っかかったり、パッキングがしづらい点が挙げられますので、フィンガースプレータイプを選ぶと良いでしょう。後ほど紹介するジェルタイプも、かさばらず持ち運びには便利です。
③タイプ
虫除けにはさまざまなタイプがあります。
ミストタイプ
液体の虫除けを霧状で噴射するタイプで、1回の噴射量が、使いたい部位に吹き付けられるのが便利。その分、露出した部分全てに塗るのは手間がかかり、塗りムラを無くすには手を使うことにもなるのがデメリット。
ガスの力で噴射する「エアゾールタイプ」の弱点である、吸い込んでしまうリスクも低いので、子どもにも使いやすいです。
ミストタイプの容器は軽量かつ残量が見えるプラスチックの商品がほとんどで、登山に持って行きやすいアイテムが多く販売されています。
エアゾールタイプ
ガスの力で噴射し、広範囲に一気に塗ることが出来るエアゾールタイプ。その勢いのおかげでムラなく付けられるのがメリット。その代わり、1回の噴射量が多いため吸い込む可能性があり、むせてしまうことがあります。
ガス入りの容器なため、飛行機内に持ち込むことができないので注意しましょう。
ジェルタイプ
手に取ってから使うことタイプの虫除けで、塗り残しやすい部位も難なくカバーでき、塗りムラを無くせることがメリット。吸い込む危険性もないので、安心して使うことが出来ます。
手がベタつくこと、服の上から使用出来ないので行動中に使用するのには少し難があります。
上記の3つ以外にも、ローション、ロールオン、シートタイプの虫除けもあります。
登山で使いたいおすすめの虫除け7選
ここからは、先に説明した選び方に則ったもの、実際に使って効果の高かった虫除け全7アイテムを紹介していきます!ぜひ参考にしてみてください。
池田模範堂
ムヒの虫よけムシペールα
ディート12%配合の強力な虫除けスプレー「ムヒの虫よけムシペールα」。蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、マダニ、ヤマビル、トコジラミ(ナンキンムシ)、ツツガムシなど多くの害虫に対して忌避効果があるとされています。
今回おすすめするアイテムの中でもダントツで効果の高い商品となっています。
マダニが多い薮の中や、丹沢などのヤマビルの被害が考えられる場所に行く時は、これを付けておけば被害を最小限に抑えることができるでしょう。
60mlボトルと、登山で携行しやすいサイズが嬉しいポイントです。
※顔への使用、6ヶ月未満の乳児への使用は避けてください。
フマキラー
天使のスキンベープ
フマキラー株式会社から出ている天使のスキンベープはディートフリーで、潤水成分ヒアルロン酸Naも配合されている、赤ちゃんや肌の弱い方におすすめの虫除けです。
「イカリジン」を高濃度(15%)で配合し、虫よけ効果が6~8時間持続します。肌に優しいにも関わらず、蚊成虫、ブユ(ブヨ)、アブ、マダニ、イエダニ、トコジラミなど適用害虫が多いのも◎。
ベビーソープの香りが心地よく、虫除けの匂いが苦手という方も使いやすくなっています。
蚊やマダニは虫除けのかからなかったわずかな隙間を刺してきます。
スプレータイプより塗りムラを減らすことができるジェルタイプも出ていて、こちらもおすすめです。
パーフェクトポーション
アウトドアボディスプレー エクストラ&ハッカ
アロマ虫除けスプレーとして長年ナチュラリストに愛用され続け、多くのアウトドアショップでも置かれている「パーフェクトポーション アウトドアボディスプレー」。
シトロネラ、ペパーミント、ユーカリ、ティーツリー、ニアウリなど、世界中から厳選した天然素材のみを使用して作られたオーガニックな虫除けスプレーです。
50mlとコンパクトで登山に持っていくのに最適なサイズです。
ディートやイカリジン不使用なので効果の持続時間は短め。汗をかいてしまうと匂い成分も落ちてしまうので、登山中に何回か塗り直すことをおすすめします。
植物由来ではありますがメントールやエタノールが入っており、刺激を感じる場合もあります。顔に直接吹きかけるのは避けた方が良いでしょう。
KINCHO
お肌の虫よけ プレシャワーDF ミスト プラスハーブ
KINCHOの「お肌の虫よけ プレシャワーDF ミスト プラスハーブ」は、有効成分イカリジンと天然精油のハッカ油を配合。ハーブの爽やかな香りとひんやりとした使い心地が特徴のミストタイプの虫除けです。
お肌に優しく何回でも塗り直しが可能。登山で汗をかいて効果が落ちたとしても、塗り直してサッパリ出来るのでおすすめです。
衣類にも優しい虫除け成分が使われているので、服の上からも気軽に使うことができます。
オーガニックマドンナ
アロマガードミスト
ユーカリ、シトロネラ、シダーウッド、レモングラスなど虫が嫌がる香りの天然成分をバランスよく配合したアロマガードミスト。
石油系、植物性アルコールやディート、防腐剤や着色料も不使用なので、新生児から大人まで安心して使用できるのがポイント。
オーガニック保湿成分98%でアロエベラ葉水が配合されているため、化粧水としての役割も果たしてくれ、乾燥しやすい登山では嬉しい商品になっています。
VIVO(ヴィーヴォ)
アウトドア UV ナチュラルカラー
「VIVO アウトドアUV」は商品名の通り、アウトドア専用の日焼け止め。
日焼け止めとして売られている商品ですが、昆虫忌避成分としても知られる“ペパーミント”と“ユーカリ”の精油をブレンドしているため、虫が近寄ってきません。爽やかで清々しい香りが、暑さを忘れさせてくれるのも嬉しいところ。
スティックタイプなので顔や首に塗りやすく、行動時の塗り直しも簡単に出来ちゃいます。腕などの範囲の広い部位に使うのはちょっと大変です。
日焼け止めとしてもSPF50+、PA+++の高い紫外線カット効果を持ちながらも、バラペンやアルコール、ディートを使用していないので肌にも環境にも優しいのが特徴。日焼け止めと虫除けが同時に行える一石二鳥のアイテムになっています。
ホワイトとナチュラルカラーの2色展開ですが、ナチュラルカラーは男性の肌にも女性の肌にも馴染む自然なカラーになっていておすすめです。
健栄製薬
ハッカ油
ハッカキャンディーなど、お菓子に使われるイメージが強いハッカ(ミント)ですが、その爽やかな香りには、蚊・アブ・ブヨ・ハチ・カメムシにとって忌避性があると言われています。上記で紹介したアロマ虫除けスプレーでもハッカが使われている商品がいくつかあったと思います。
ハッカ油は、化学物質が一切含まれていない天然成分由来なのでお肌に優しく、安心して使うことができます。
ハッカは香りが虫除けの効果を果たしてくれています。 ハッカ油の虫除けスプレーを使う場合は、香りが消えないようにこまめに付け直すことで、虫除けの効果を持続することができます。
原液のままので直接肌に塗布すると刺激が強く、肌荒れを引き起こす可能性があるので注意しましょう。
○ハッカ油の虫除けスプレーの作り方
引用元:健栄製薬
【用意するもの】
・ハッカ油……3〜4滴
・無水エタノール……10ml
・水……90ml
・スプレー容器
①無水エタノール10mlを準備して、ハッカ油を少量(3〜4滴)垂らして混ぜます。
②ハッカ油の量は、刺激が強くなり過ぎないように、少しずつお試し下さい。水を90ml入れて混ぜ合わせ、スプレーボトルに入れたらできあがり。
ここにレモングラスやラベンダーなどの精油を入れることで、さらに虫除け効果を高めながら、自分の好きな香りの虫除けスプレーを作ることが出来るのでおすすめです。ぜひ試してみてください。
おわりに
以上、登山に持って行きたいおすすめの虫除け紹介でした!
登山中まとわりついてきたり、時には危害を加えてくる虫たちですが、しっかり対策をとることで快適に、そして安全に登山をすることが出来ます。
登山の虫対策において虫除けは欠かせないアイテムの1つですので、この記事を参考に自分に合ったものを選んでみてください。
虫対策には、虫除けをすること以外にも重要なポイントがいくつかあります。こちらの記事もあわせて読み、万全な虫対策をして登山に行きましょう。
それでは、おしまい!
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