登山用品店のレインウェアコーナーに行くとたびたび目にする「GORE-TEX(以下、ゴアテックス)」の文字。
名前は知っているけど、商品名なのか何なのかイマイチわからない…という方も多いのではないでしょうか?
ゴアテックスは素材の名前であり、登山ではおなじみの高機能な防水アイテムです。
今回は、そのゴアテックスにはどんな機能や種類があるのか、レインウェアの他にもゴアテックスが使われている登山アイテムはあるのかを詳しく解説していきます。
ゴアテックス製品を取り入れることで、登山をより安全で快適に行うことが出来るので、知識として軽く覚えておきましょう。
ゴアテックスとは何?どんな効果や機能があるの?
ゴアテックスとはアメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造販売する、防水・透湿・防風性に優れた素材を使った製品のことです。
この素材を使ってTHE NORTH FACE(ザ ノースフェイス)やARC’TERYX(アークテリクス)、mont-bell(モンベル)などさまざまな有名アウトドアメーカーが商品を展開しています。
まず、ゴアテックス製品の機能を説明する上で欠かせない、ゴアテックス製品全てに使われている「ゴアテックスメンブレン」という素材について説明していきます。
ゴアテックス製品の全てはここにあり!
ゴアテックスメンブレンの機能
「ゴアテックスメンブレン」とは内部に無数の微細な孔(あな)を持つ薄いフィルム状の膜のような素材で、防水・透湿・防風に優れた、言わばゴアテックス製品の“心臓部”です。
このゴアテックスメンブレンの孔は約0.2ミクロンで、水滴が通過できないほど小さく、水蒸気の分子は通り抜けられるサイズになっています。
それにより、メンブレンが雨などの水を防ぐ(防水性)と同時に、汗による水蒸気を放出するため蒸れにくくしている(透湿性)のがゴアテックス製品です。
さらにメンブレンは、クモの巣状に張り巡らされたような構造で出来ており、空気の流れのかたまりを分散し、風の侵入を防ぐ(防風性)仕組みになっています。
ゴアテックス製品の構造は主に4種類
先ほどゴアテックスメンブレンについて説明をしましたが、厚さわずか0.2ミクロンほどの薄い膜で出来ているため、これだけでは着用することが出来ません。
ゴアテックス製品は一般的に耐久性や着心地を良くするために、ゴアテックスメンブレンに表地や裏地を貼り合わせて作られています。
ゴアテックスメンブレンに生地を合わせて初めて「ゴアテックス製品(ゴアテックスファブリクス)」と呼ばれます。
ゴアテックスといっても、製品によって生地の組み合わせ方(層構造)が違います。
種類は主にこの4つです。
層構造 | 特徴 |
---|---|
3層構造(ゴアテックス ファブリクス3レイヤー) | 最も主流なタイプ 非常に丈夫で、裏生地があるので肌触りが良い。 |
2層構造(ゴアテックス ファブリクス2レイヤー) | 柔らかく、動きやすく透湿性を重視している |
2.5層構造(パックライト® プロダクト テクノロジー) | 非常に軽量で小さく収納できる 高い透湿防水性 |
ゴアテックス シェイクドライ※ | 製品表面にゴアテックスを配置しているので、 非常に透湿防水性が高い |
※ゴアテックス シェイクドライは生産中止との噂があります。
表裏両面に生地を貼り合わせた3層構造のものを「ゴアテックス ファブリクス3レイヤー」と呼び、表面だけに生地を貼り合わせた2層構造のものを「ゴアテックス ファブリクス2レイヤー」と呼びます。
また、裏地に耐摩耗性に優れた特殊な微粒子を固着させて、他の生地を用いてメンブレンを挟み込む方法に比べて大幅に軽量・コンパクト化を実現させた2.5層構造の「パックライト® プロダクト テクノロジー」があります。
そして少し特殊ですが、メンブレンを表面に配置することにより、極めて高い防水透湿性を実現した「ゴアテックス シェイクドライ」というものもあります。
このように製品によって使われている生地(層構造)が違うため、同じゴアテックスメンブレンを使っていても、組み合わせにより耐水圧・透湿性の性能や着心地が異なります。
ゴアテックス製品のメリット
先ほども説明しましたが、ゴアテックスメンブレンは防水性・透湿性・防風性の3つの機能があります。
しかもそれは、他の製品に比べて高いレベルでバランスよく備わっています。
このメリットだけで十分登山で使いたいアイテムですが、他にもまだまだ優れている点はあります。
たくさんの機能が備わった製品が多い
ゴアテックスメンブレンだけで防水性・透湿性・防風性の3つの機能があるため、これだけで雨風をしのげる能力があります。
そのため、貼り合わせる表地や裏地はその機能を気にせず、他の撥水性や速乾性などの機能をプラスして、さらに快適に使えるウェアを作ることが可能になっています。
たくさんの機能があればあるほど、登山を快適で安全に行うことが出来るので、そういった点でゴアテックス製品は選ばれているのかもしれませんね。
高機能性を持ちながらも軽い製品も多くある
たくさん機能が備わった製品は重くなってしまいそうなイメージですが、ゴアテックス製品には軽量なものも多くあります。
ゴアテックス製品と言っても、先ほど紹介した4種類の層構造に加えて、ウェアでは使用シーンによって生地の素材や機能を変えた8種類ものテクノロジーが展開されています。
その中でも「ゴアテックス パックライト®︎」・「ゴアテックス パックライト®︎プラス」・「ゴアテックス アクティブ」・「ゴアテックス シェイクドライ™」が軽量なテクノロジーラインナップになっています。
軽いウェアだと約200gとTシャツ1枚と同じ重量のものもあります。
しっかりお手入れをすれば長く使用できる
雨や風の強い環境で使うゴアテックス製品は耐久性が高いのも特徴です。
しかし、耐久性の高いゴアテックスでもお手入れをしなければ長くは使えません。
ゴアテックス製品を長使用する秘訣は“洗濯をすること”にあります。
洗うと防水性が落ちちゃいそうと思っていませんか?
使用後は汗や皮脂、砂や泥などが付着したままになっているので、そのままの状態では機能が低下して寿命も短くなってしまうのです。
こちらの記事でゴアテックウェアの洗濯方法を紹介していますので、参考にしてみてください。
雨や風にさらされても大丈夫で、耐久性もある一見完璧そうなゴアテックス製品ですが、気をつけなければいけないのが穴を空けてしまうことです。
特に焚き火などで飛ぶ火の粉には要注意です。
ゴアテックス製品ではないウェアにも言えることですが、特に化学繊維のウェアは火がつくと焦げて穴が空いてしまいます。
穴が空いてしまいますと、ゴアテックスの機能が台無しになってしまいます。
一つひとつ高い商品が多いので、火を使う場面で着用する時は特に注意しましょう。
ゴアテックス製品のデメリット
デメリットと言っていいのか分かりませんが、どのゴアテックス製品も総じて価格が高くなっています。
ここまで紹介してきたようにゴアテックス製品はとても高機能なものになっています。
コスパが良いとされるmont-bellでもレインウェアはジャケットだけで2.5万円、パンツも合わせると4万円を超えてしまいます。
また、厳冬期の雪山などで使う製品に至っては10万円を超えるウェアもあります。
機能やデザインを気に入って「これ欲しい!」となっても手を出しづらいのが難点です。
ゴアテックスが使われている登山アイテム
ゴアテックスといえば「レインウェア」を思い浮かべる方が多くいるかと思いますが、実は登山で身につけるあらゆるアイテムに使われているのです!
①レインウェア・アウター
ゴアテックスウェアは4種類の層構造に加えて、ウェアでは使用シーンによって生地の素材や機能を変えた8種類ものテクノロジーが展開されています。
一つひとつ解説すると長くなるので、ここではテクノロジー名とその特徴を簡単にまとめておきます。
詳しい内容を知りたい方はゴアテックスの公式サイトをチェックしてみてください。
ゴアテックスウェアのテクノロジー名 | 特徴 |
---|---|
・GORE‑TEX(ゴアテックス) | 防水・透湿・防風性のバランスの取れたスタンダードタイプ |
・GORE‑TEX PRO(ゴアテックス プロ) | 本格的な登山・クライミングに向けた耐久性に優れたハイスペックモデル |
・GORE‑TEX PERFORMANCE(ゴアテックス パフォーマンス) | 高い防水性と撥水加工により長時間の雨に対応できるモデル |
・GORE‑TEX ACTIVE(ゴアテックス アクティブ) | 卓越した軽量性と透湿性を持ち、肌触りも良く1日中着ていられる快適性に優れたタイプ |
・WINDSTOPPER® プロダクト by GORE‑TEX LABS | 高い防風性と透湿性で風の冷たい日を快適に過ごせる 他のタイプに比べて防水性に欠ける |
・GORE‑TEX SHAKEDRY™(ゴアテックス シェイクドライ) | 非常に優れた透湿性と軽量性に加え、ゴアテックスメンブレンを表地にした独特な撥水性、ランニングにおすすめ |
・GORE‑TEX PACLITE®/PACLITE®PLUS (ゴアテックス パックライト/パックライトプラス) | 軽量でコンパクト、持ち運び便利で急な雨にもすぐ対応できるタイプ |
レインウェアの場合、一日中雨の日や沢の渡渉を含む登山などをしない、ごく一般的な登山を楽しむ人や登山初心者は、普通の「ゴアテックステクノロジー」が使われている製品が、販売されている種類も豊富で、使い勝手がいいのでおすすめです。
レインウェアでは無くウィンドブレーカーをお探しの場合は、「GORE‑TEX ACTIVE(ゴアテックス アクティブ)」や「WINDSTOPPER® プロダクト by GORE‑TEX LABS」のテクノロジー製品も良いかもしれません。
これらのテクノロジーは販売時に付けられているタグで確認することが出来ます。
また、ネットショップで買う際には製品情報に記載されているので、ショップサイトや公式サイトの製品情報をよく読んでから購入しましょう。
②手袋・帽子
冷たい風に当たると真っ先に冷える“手”。
一度でも冷えるとなかなか温まらないので、まず冷やさないことが重要です。
特に春秋の登山は下が暖かくて防寒グッズを忘れがちですが、標高が高い場所に行くと10℃くらいまで一気に冷えこむので、持っていくことをおすすめします。
手袋にはウェアのようにテクノロジーがあり、主に普通の「ゴアテックス」と「WINDSTOPPER® グローブ by GORE‑TEX LABS※」に分けられます。
※「WINDSTOPPER® グローブ by GORE‑TEX LABS」の元の名称は「GORE‑TEX INFINIUM WINDSTOPPER®(インフィニアムウィンドストッパー) 」です。
「WINDSTOPPER® グローブ by GORE‑TEX LABS」は防水性を必要としない風の強い日のために設計された、高い防風性と透湿性を備えた手袋で、風の冷たい春秋の登山にぴったりのテクノロジーです。
帽子もゴアテックス素材が使われていると快適性が違い、急な雨にも対応できるのでおすすめです。
③登山靴
ゴアテックスの登山靴であれば、雨の日以外にも雨上がりや雪解けでぬかるんだ道や、沢の渡渉もへっちゃらです。
そして、夏の暑い時期には靴の中が蒸れて気持ち悪いことも多いですが、ゴアテックスの登山靴であればムレを逃してくれるので快適に歩くことが出来ます。
また、トレランシューズにも多くゴアテックスの商品が出ています。
夏に足がムレやすい方やトレイルランニングをする方におすすめです。
また、厳冬期用の登山靴にもゴアテックスが使われており、こちらは雪や風を防いでくれるだけでなく、保温性があるものも出ています。
雪山登山を考えている方はこちらもチェックしてみてください。
まとめ
以上、ゴアテックスについての解説でした!
ゴアテックスは登山界において一番と言っていいほど有名かつ高機能な素材です。
登山を始めるにあたり、レインウェアや登山靴を探している方、すでにそれらは持っているけど雨風に対するスペックが低くてゴアテックス製品が気になっている方は、この記事を参考にぜひ試してみてください。
それでは、おしまい!
コメント