皆さんは日本三大急登というものをご存知でしょうか?
パッと答えられる人は多くないかもしれないですね。
今回はその日本三大急登の一つ、谷川岳の西黒尾根を登ってきました。
谷川岳には過去に3回登っているのですが、ロープウェイを使わずに登るのは今回が初めて。
急登と言われる登りは、日本アルプスを彷彿とさせる絶景と岩場歩きでとても楽しいルートでした。
駐車場情報
登山口から最も近い駐車場は谷川岳ロープウェイの駐車場ですが、早い時間のため開いていなかったので谷川岳インフォメーションセンターの駐車場を利用しました。
無料で谷川岳ロープウェイまで歩いて5分と近いので、安く済ませたい方はオススメです。


コースタイム・ルート紹介

今回は登りを西黒尾根コース、下りを天神尾根と途中から田尻尾根コースを歩きました。
谷川岳インフォメーションセンター→谷川岳ロープウェイ(5分)→西黒尾根登山口(10分)→ガレ沢の頭(2時間30分)→肩の小屋(1時間20分)→谷川岳トマの耳(5分)→天狗の留まり場(25分)→熊穴沢避難小屋(30分)→田尻尾根分岐(20分)→田尻尾根登山口(1時間)→谷川岳インフォメーションセンター(40分)
合計コースタイム:7時間5分(YAMAP参照)※休憩時間は含まれません。
谷川岳インフォメーションセンター(04:37)→谷川岳ロープウェイ(04:42)→西黒尾根登山口(04:50)→ガレ沢の頭(06:47)→肩の小屋(08:01)→谷川岳トマの耳(08:05)→天狗の留まり場(08:47)→熊穴沢避難小屋(09:12)→田尻尾根分岐(09:41)→田尻尾根登山口(10:20)→谷川岳インフォメーションセンター(10:55)
合計コースタイム:6時間22分(休憩時間:55分含む)
2022年6月26日(日)

朝は4時半、東の空が明るくなってきた。
私の住んでいる東京の朝はこの時間帯くらいから暑くなり始めるが、標高が750mある山の中は止まっていると寒いくらい。

最近ソロ登山が多かったが今日は山友のくるなるさんと登ります。
もうこの時点で楽しい。
ソロ登山も好きなんだけど、3回に1回くらいは誰かと一緒に登りたくなる。

インフォメーションセンターから5分ほど歩くとロープウェイ乗り場「谷川岳ベースプラザ」に到着します。
朝早いので建物はまだ眠っています。今日は西黒尾根を歩くので通り過ぎます。

注意喚起の看板。
どちらが悪いとか無いけれど、山は動物の住処だから私たち人間が驚かせないよう、会わないように対策をしなくちゃいけないよね。
ちなみに今回行く西黒尾根では小熊3頭の目撃情報があったよう。
今後行く方は気をつけてくださいね。

下からロープウェイを見上げる。奥には天神平駅も見えます。
谷川岳は今回で4回目になるのですがロープウェイを使わないのは今回が初めて。
あれは貴族の乗り物…

西黒尾根へはこの車両通行止めの柵を通って行きます。

谷川岳休憩舎
朝早い時間だとロープウェイの建物が開いていないので、紙媒体で登山届を出している方はコチラで出すことが出来ます。
24時間開いているので、ここで前泊する人もいるようです。
このコロナのご時世にはあまりよろしくないと思いますが、谷川岳主脈縦走とかする時には使わせてもらいたいですね。

西黒尾根の登山口へは先程通った柵から10分ほどアスファルト道を歩きます。


4:55、西黒尾根登山口に到着。日本三大急登の始まりです。
三大急登は他に甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根、烏帽子岳のブナ立て尾根があるが、6月の初めに登った黒戸尾根がとてつもなくキツかったので、今回も気構えて登ります。
最初から高さのある登りです。

ブナやナラなどさまざまな樹木が立ち並ぶ森。
谷川岳にこういう森のイメージが無かったから新鮮です。

最初の方は泥濘が凄かったです。
雨の仕業、樹林帯だから乾かないだろうなあと思っていました。

しかし犯人は雨ではなくこの水場で、登山道へ垂れ流しになっていました。


登山開始から10分ほどで鉄塔が出てきました。
開けていて休憩できるスペース。雲はあるが向こうの山は朝日に明るく照らされている。
ずーっと樹林帯だと疲れちゃうからこういう場所があると良いよね!

パワーをもらって再び歩き出す。
段差が大きく足を上げて登らないといけないので、そこまでキツさはないけどあまりペースは上がりません。

西黒尾根の登山道脇にはたくさんギンリョウソウが咲いていました。
見た目はちょっと怖いけど透き通った白が綺麗なんだよね。私は好きです。

そして西黒尾根名物(?)、直角の木を発見!
座らせていただきましたが硬くてお尻が痛〜くなる椅子でした。

登り始めて30分ほどで山頂まで3時間の看板。
くるなるさんと「案外余裕?なんか早く着きそうだね」って話しながら登っていました。

そんなことを言っていると目の前に今から登る道が見えてきた。
前言撤回、「あれやっぱりキツそうだ」

左手にはロープウェイトップの天神平駅も見えます。
大体同じ高さに見えるので、コチラの樹林帯分をロープウェイで上がることが出来るようです。
樹林帯はあまりキツくなかったので、ある程度の体力と経験がある人はロープウェイ使わないでこっち登った方が楽しめるのでは?と思った。まあその後の岩場がキツいのだろうけど。

登山口から1時間10分、なんか樹林帯を抜けそうな雰囲気!

岩盤の開けた場所に出ました。青空が広がっている~!
景色はというと…

天神尾根方面

武尊山方面。
雲が流れるのが早く青空が出て、清々しい朝の陽気に包まれる山々。
樹林帯も長くなく景色良いのでテンション上がりました。
だけど暑くなってきたからか虫がすごい…

西黒尾根特徴の岩場の片鱗を見せる。
私は岩場が大好物なのでワクワクしています。

最初の鎖場が出てきました。長さは5mほどで鎖もしっかりとしたものが付いています。
しかし、手の置き場もステップもたくさんあったので鎖を使わないで登った方が身体がブレなくて良いかもしれません。
あとちょうど大学のワンゲル部の渋滞にハマった。男女比がほぼ一緒で日本三大急登をワイワイキャッキャッと登っていた。
若いって羨ましいね!(私もまだまだ20代半ば…)

待ちが長いので目を移すと手前に白毛門・朝日岳の谷川岳馬蹄形縦走コースが見える。いつかあっちも歩いてみたいんだよな~!
あと奥は巻機山かな?

登山道脇にはタニウツギが咲いている。
青空と合わせると「もう夏だね」と思わされる。

鎖場を登り切ると今度はドンっと谷川岳がお目見えになります!カッコいい〜!!
トマの耳とオキの耳、どっちもしっかと捉えることが出来ます。
マチガ沢の谷にはまだ多くの雪が残っていました。

ここからは鎖場だったり大きな岩を乗り越える小さなアップダウンが続きます。
標高も高くないし周りが草に覆われているのであまり高度感は無かったけど、写真で見るとなかなか怖そうな場所だね。


一回一回の壁が急ですが鎖があるところは高さが3〜5mほどなのでそこまでキツくない。
あとボルダリングの経験が活かされているのでしょうか、安定した登りが出来て怖さはなく楽しい!
大体の場所は鎖は使わずに3点支持で登れますよ。

6:40、西黒尾根の小ピークラクダの背に到着!
なるほど、確かに今までのアップダウンはラクダのコブみたいだったな。

そしてコチラはラクダの背から見た谷川岳方面。
間近で見る谷川岳は岩岩しさがあり迫力がすごい。谷川岳ってこんなにカッコいい山だったっけと再確認させられる。
そして今はラクダの背にいるからこっちはラクダの首と頭かな?そう考えたらそれにしか見えなくなってきた(笑)

岩岩した登りは一旦お休み、狭い土の尾根道になります。
UL、トレランらしい格好をしているから走らないとと意見が合致して走り出す。
だけど、軽身じゃないと大変だからとこの格好にしただけで、トレランはしたことがほぼ無いのですぐにバテます(笑)

走っていると次は厳剛新道との合流点、ガレ沢の頭に到着しました。
コチラの道はこの時期はまだ、雪渓の急斜面トラバースがあって滑落の恐れがあるルートのようです。
崩壊箇所も多いようなので行く際はしっかりとした準備と心構えで。

ガレ沢の頭からはまた岩場歩きになります。
北アルプスの岩場かと思わせるほどの迫力がある。難易度はあまり高くないのにこの景観を味わえるのは素晴らしい。

ハクサンコザクラ

ホソバヒナウスユキソウ、かな?

そしてミヤマキンポウゲ、かな?
花は詳しくないので調べているのだけど確証がない…間違えてたら教えてください!
しかし、危ない岩場なのに花がたくさん咲いていて天国か地獄か分からなくなってくる(笑)
でも逞しい花たちに万歳!

空を見上げるほどの登り。岩場好きにはこの斜面、たまりません。
登りやすいのがまた良きかな。

難易度は高くないけど集中して登るから一回一回疲れます。
休憩がわりにくるなるさんと撮りあいっこ。
人物がいる山の写真ってなんでこんなに画になるんでしょうね。

撮りあっていた中での今回のハイライト
雲が芸術的だったので空主体で撮ったんだけど、天使の梯子もあって幻想的な一枚が撮れた。
ちょっとRPGの世界観がある。

標高を上げると岩の種類が変わってきて、谷川岳特有の蛇紋岩になってくる。
これがとにかく滑ります。雨の日だと「登れないんじゃないかな?」と思うほどツルツルです。
登山靴だと大丈夫なのかもしれないですがトレランシューズだと滑りました。
急斜面の岩場は鎖を握らず登りましたが、緩斜面の蛇紋岩上はロープを使って歩きました。

登っていくと左手に石舞台があるのですが天然の滑り台だよね。
雨の日は乗ったら谷に射出されそう…

今まであまりキツさは感じなかったけど、ここら辺から暑くもなってきたからか疲れが出始めた。
上にポコっと見えるザンゲ岩で休憩することに。

なぜか登山を計画する上でコレだけは外せないと思ったのが、ザンゲ岩で懺悔している風の写真を撮ってもらうこと…
…くだらないことをしてすみません(懺悔)

山頂まであと一息、休憩もしたので頑張ります。
ザンゲ岩を過ぎると急登は終わり、緩やかなガレ場になります。
くるなるさんが指差している方には…

仙ノ倉山や平標山など谷川岳主脈縦走コースの山々が見える。
馬蹄形もだがコチラも歩いてみたいコースの一つだ。
もう谷川岳には4回も登っているし次は繋げてみようかな。

主脈の方が見えてきたということで、ようやくケルンも見えてきました!

雪渓を渡るところまで来て、岩のほうに道が伸びていて行けそうだったので真っ直ぐ進もうとしました。
しかし、大きな岩の手前に笹が生い茂っていてあまり使われてなさそうだったので引き返して雪渓を渡りました。
山頂に向かう際にこちらに伸びる道があったし、地図を見る限り行けそうだったのでわざわざ戻らなくてよかったな。

コチラがその雪渓。
距離は10mくらいで斜度もないトラバース、ロープもあるのでアイゼンを履かずに歩けました。

8:00、肩の小屋に到着。
見た目は避難小屋に見えるけど(失礼)食事提供のある立派な山小屋です。
トイレもあります(100円の協力金)


休憩するスペースもたくさんあります。

ここまで来ると先ほど見た主脈コースが真正面に見えます。

天気が怪しいのでササっと山頂へ向かいます。

8:10、登り始めてから3時間10分で谷川岳トマの耳(1963m)に到着!
西黒尾根は急登でしたが身体全体を使う登りで疲れが分散されるのであまりキツくなく、岩場あり絶景ありの登山道だったのでとても登っていて楽しかったです。
谷川岳主脈コース方面

谷川岳オキの耳(1977m)方面
あちらの方が標高が高いので実質的な山頂はオキの耳でしょう。
しかし山頂に着いた時点で雨が降ってきて、また2人とも4回登っているので行かなくて良いかとなり即下山しました。
天気が悪くなるのは昼過ぎだと思ったんだけどな。
聞くところによると、くるなるさんは全4回とも天気が悪く相性が悪いんだって。だから多分雨を降らせたのは…

下山は天神尾根と途中から田尻尾根を使います。
肩の小屋下にはまだしっかりと雪が残っていました。

まだまだ溶けなさそうな雰囲気があります。ここ、要注意です!
写真右にロープが張ってあると思うのですが、足場は全くステップが無くとても滑ります。
登りは良いですが下りは必ずアイゼンをつけましょう!
滑ると止まらず、下にある岩地に突っ込んで大事故に繋がります(体験済み…?)

雪渓が終わったら整備された道を歩いて帰ります。

そういえば天神尾根にもザンゲ岩がありました。
西黒尾根のザンゲ岩で十分悔い改めてきたのでここではやりません。

天狗の留まり場
人がたくさん、とまり場じゃなくてたまり場になっていました。

降りてきた時に思ったけど、天神尾根も岩場があって登りは良いだろうけど下りはなかなか難しいね。

天神尾根名物の熊穴沢避難小屋です。
冬には2mほどあるこの建物もすっぽり雪の中です。
そりゃまだ上には雪が残っている訳だ。

天神峠分岐から天神平へ向かって10分ほど歩くと田尻尾根の分岐があります。
西黒尾根に続いてコチラも初めてのルートです。
細い道に覆いかぶさる草木、怪しさプンプンだぜ。

予想は的中、倒木あり・泥濘あり・急登続きの極悪登山道でした。
泥濘で何回滑ったことやら…音楽流して元気をもらいながら降りました。

距離にして3.6km、40分ほどかけて降りると開けた白い空間に出ました。
これでキツーい道は終わりです。生きて帰って来れた~!!

コチラが田尻尾根の入り口です。
2度と使いたくありません(笑)
こんな所登る人いないだろうと思っていたのだが、この日は4組ほどすれ違いました。
凄いなと思いながら話を聞いてみると、ロープウェイが止まってしまったからコッチにしたんだとか…
ロープウェイが使えないからってこっちの尾根を使って登ろうとは…自分は思わないな。

あとは工事車両が通る沢沿いの道を下っていきます。

火照った体に沢の水が気持ちいい!
全身入りたいくらいだったけど頭から水被る程度に済ませます。


最後、行きに通った車道に出ます。
田尻尾根への入口はココだったんだね、全然気づきませんでした。
ロープが張ってありますが入れます。

10:55、無事に駐車場まで戻ってきました。降りてくる頃には駐車場には沢山の車が停まっていました。
私服姿の人が多かったけど、何を観光するのだろう…

西黒尾根から登る谷川岳
日本三大急登の一つということで気構えて行ったのですが、段差や斜度はあるものの歩きやすい道で、しかもアルプスのような岩場歩きがあったり絶景が見られたりしたので、キツさより楽しさが勝るルートでした。
今度から谷川岳に登るときは全部このルートを使うかも!?
ぜひ皆さんも挑戦してみてください!
そして同行してくれたくるなるさん、ありがとうございました。
以上、おしまい!
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