登山を始めた人は誰もが味わう辛い「筋肉痛」
登山の翌日に目を覚ますと「動けない…」「歩くたびに激痛が走る…」なんてこともしばしば。
そんなひどい筋肉痛でお困りの方は必見。筋肉痛にならないための対策をご紹介します!
- 筋肉痛になる理由
- 筋肉痛になりやすい部位とその原因
- 登山前・中・後にする筋肉痛にならないための対策
登山で筋肉痛になる原因
筋肉痛の原因は未だハッキリとはしていません。
一般的には運動をした時に身体の中でこのようなことが行われて筋肉痛になると言われています。
登山では、階段の登り降りよりも急な段差をバランス感覚も使いながら登ったりするため、普段使わない筋肉を使ったり、長時間歩き続けるので、特定の部位(特に太ももやふくらはぎ)が筋肉痛になりやすいのです。
筋肉痛になりやすいのは登りと下り、どっち?
登山は当たり前ですが、登ったら下らなければいけません。
その登り下りでは使う筋肉の運動が変わってきます。
- ①登り
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階段の登りと同じ運動。筋肉を収縮させながら力を発揮する短縮性運動
主に、ふくらはぎ・太もも(ハムストリング)・おしり(大臀筋)が使われる
- ②下り
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階段の下りと同じ運動。筋肉を伸張しながら力を発揮する伸張性運動
主に、ふくらはぎ・太もも(大腿四頭筋)が使われる
この2つのうち、筋肉痛になりやすいのは下りです。
特に下りでは、伸張性運動という筋肉の動きが行われることが多く、この運動が筋肉痛になりやすいと言われています。
伸張性運動は、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮するので、筋繊維に微細な損傷が起きやすいというのが筋肉痛になりやすい原因の1つとして考えられています。
下りでは脚の前側にある大腿四頭筋の筋肉が伸びた状態で着地するのと、その動きを止めるブレーキとして筋力が使われています。
特に下りは着地の衝撃が強いので、伸張性運動にプラスして衝撃の負荷が加わっていることになります。
登山で筋肉痛になる部位と原因
登山をして筋肉痛になった部位を確認することで、自分の衰えている筋肉や使いすぎな筋肉が分かってきます。
登山で筋肉痛になりやすい部位は大きく5つあります。
部位別に筋肉痛になる原因や対処法をご説明していきます。
太もも
太ももは、前と後ろの2つ部位に分けられます。
①太もも後ろ側(ハムストリング)
太ももの後ろ側には「ハムストリング」と言われる筋肉群があります。
この筋肉は、主に膝を曲げた状態から体を持ち上げる登りで使われます。
登山では普段登ることのないような大きな段差を登ったり、重い荷物を持って登るので、ハムストリングへの負荷が大きく、運動不足や筋力が少ないと筋肉痛が起こりやすいです。
ハムストリングが筋肉痛になりやすい人は、筋トレで鍛えるとともに、登山時にはおしり(大臀筋)を使って登ると良いですよ!
②太もも前側(大腿四頭筋)
特に太もも前側が筋肉痛になりやすい人も多いのではないでしょうか?
太もも前側が使われるのは主に下る時です。
下りは、重力の関係で足を前に出すだけで進みやすい状態です。
それを制御しながら歩く必要があり、着地のたびに下半身のブレーキを使って歩いています。
ここで使われるのが太ももの前側「大腿四頭筋」(通称:ブレーキ筋)です。
また、前に行こうとすると身体の重心も前にいってしまい、かかとが上がった状態になりやすいく、その状態だと大腿四頭筋が刺激されて、さらに筋肉痛になりやすいです。
歩き方を見直したり日頃から筋トレで鍛えると改善します。
③ふくらはぎ
ふくらはぎが筋肉痛になる人は歩き方に問題があるかもしれません。
つま先に体重を乗せて登ったり、つま先で蹴り出して歩いたり、また下山時に踵(かかと)から着地すると、ふくらはぎがピーンと張った状態になります。
これは先ほど説明したふくらはぎで伸張性運動が行われていて、筋肉痛が起こりやすくなっています。
ふくらはぎが筋肉痛になりやすい人は、筋トレで鍛えるのもいいですが、歩き方を見直すのが最優先でしょう。
④おしり(大臀筋)
おしりが筋肉痛になる人は、正しく山を登れている証拠!!
おしりの筋肉は骨盤の安定や姿勢の維持に大きく貢献しており、単一の筋肉としては人体で最も体積が大きく、強い筋力と持久力を兼ね備えています。
おしりの筋肉が使えているということは、股関節の伸展(直立状態から足を後ろに引く動作)が正常に出来ており、登りの推進力を生み出すことが出来ています。
筋肉痛になったら「正しい歩き方が出来た!」と自分を褒めてあげてください!
もし、もっと登りを楽にしたかったり、気になる方は筋トレをすることをおすすめします。
⑤上半身(腕・肩)
登山では脚をメインに使いますが、腕や肩の上半身が筋肉痛になる場合もあります。
腕や肩が筋肉痛になる原因はいくつか考えられます。
- 岩場や鎖場がある登山をした
- トレッキングポールを使っていて、突き方を間違えている
- ザックがあっていない
主に考えられるのがこの3つでしょうか。
まずは、自分がどれが原因で筋肉痛になっているか把握する事が大切です。
①岩場や鎖場がある登山をした
岩場や鎖場の歩行は、慣れないと落ちないか心配で、身体がこわばったり腕で身体を支えようとしてしまいがちです。
岩場は両手両足を使った登り方になりますが、体重は足にかけるようにして、手はあくまでもバランスを保つものとして覚えておきましょう。
また、鎖やロープも補助的なものと考え、あまり頼りすぎない登り方をしてみましょう。
初めのうちは難しいと思いますが、これを意識するだけで腕の筋力を余計に使わずに登ることが出来ます。
②トレッキングポールを使っていて、突き方を間違えている
トレッキングポールを思い切り突いていたり、脚に負担をかけまいと腕に体重を乗せすぎると筋肉痛になる可能性があります。
特に登りでも下りでも、トレッキングポールを遠くに突きすぎると腕の力を使わざるを得なくなるので、腕が伸び切らない距離に突くことを意識してみましょう。
トレッキングポールは正しく使えていないと、ただのお荷物になってしまいますよ。
③ザックがあっていない
ウエストベルトが無いザックを使っていて肩だけに負担がかかっていたり、フィッティングがしっかり出来てないと筋肉痛になる可能性があります。
また、「片方の肩だけ痛い」と言う場合は荷物が偏っていて、パッキングが上手くいっていないことも考えられます。
次の登山の前までに見直してみましょう。
登山前・登山中に出来る筋肉痛にならないための対策
登山前や登山中に、筋肉痛の対策や意識をしておくことで、筋肉痛にならないだけではなく、疲れにくくより快適に登山をすることが出来ます。
①日頃から運動・筋トレをする
登山に行くと決まって筋肉痛になって、次の日が辛かったり、登山時すぐに脚の疲労が溜まって困っているという人は、日頃からランニングや筋トレなどの運動を取り入れることをおすすめします。
平日にデスクワークやあまり身体を動かさない仕事をしている方だと、身体を動かす機会が休日の登山だけになってしまいます。
筋肉(特に下半身)は25歳をピークにどんどん衰えていくと言われていますので、運動機会が少ないと嫌でも筋肉は減っていってしまいます。
下半身の筋肉量を表すグラフ
脚の筋トレには、芸人のなかやまきんに君がYouTubeでとても脚に効く動画をあげています。
中級編になっていますが、動画内で初心者の方向けのやり方も紹介されていますので、自分にあったやり方で行ってください。
間違えがちなのが、太ももがよく筋肉痛になるからと太ももだけを筋トレしてしまうこと。
そうすると、身体のバランスが悪くなってしまい、他の部位が筋肉痛になりやすくなったり、怪我に繋がる危険性があります。
この動画は下半身全体が鍛えられますので、ぜひ参考にしてみてください!
②登り始める前にストレッチをする
登山の歩き始めは身体が温まっていなく、筋肉も硬い状態なので上手く力を使うことが出来ません。
そこで、ストレッチを取り入れて身体を温めてから登ることがおすすめです。
ストレッチには「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」の2種類あります。
この2つのうち、登山前には「動的ストレッチ」を行うことをおすすめします。
あまり聞き馴染みが無いと思いますが、このストレッチをすることで筋肉が温まり、筋肉の柔軟性と関節の可動性を高めてくれるので良いでしょう
また、関節も動かすためケガのリスクも軽減されます。
動的ストレッチのやり方はこちらのサイトを参考にしてみてください。
③登山に適した歩き方を覚える
登山は老若男女が楽しめるアクティビティです。
筋肉量が少なくなった年代の方でも楽しめるということは、登山は身体(筋肉)の力だけを頼りにして行うスポーツではないのです。
歩き方を意識するだけで、筋肉痛になりにくくなりますよ。
前傾姿勢にならず、身体を真っ直ぐに起こして歩こう
登る際、前屈みになって地面を見ながら歩いていると、登りこむ足(前に出した足)に余計な力が入ってしまいます。
基本は上半身を真っ直ぐにして歩くことを心がけましょう。
ベタ足(フラット)歩行を覚えよう
つま先だけで登ったり、踵(かかと)から着地して下っている歩き方をしていると、特にふくらはぎが筋肉痛になりがちです。
ソールが硬い登山靴を履いている人は、靴に頼りすぎてつま先だけで歩いてはいないでしょうか?
そこで覚えたいのが「ベタ足(フラット)歩行」です。
ベタ足歩行は、靴底全体で着地する歩き方で、ふくらはぎが伸びきることなく足に優しい歩き方です。
また、靴底全体で地面を捉えることで、靴底のグリップが最大限発揮されて滑りにくくなる効果があります。
最初は難しいと思いますが、歩幅を小さくして、後ろの人に足の裏を見せないように歩くことを意識してみましょう。
④タイツ、トレッキングポールなどのアイテムを活用する
一番重要なのは身体や筋肉を上手く使ってあげることです。
しかし、平日の仕事が忙しくて運動不足になってしまったり、登山を始めて間もない頃は歩き方を習得するのが難しいです。
なので、タイツやトレッキングポールなどのアイテムで筋力や関節の動きを補ってあげることで、余計な力を使わずに快適に登山をすることが出来ます。
タイツでもサポート系タイツと呼ばれるものは、筋肉や関節をサポートして、脚や膝の負担を軽減してくれます。
トレッキングポールは、登りでは上半身の力を脚に伝えることで脚の筋肉の負担を軽減し、下山時は体重や荷物の負荷や衝撃を緩和させてくれます。
また起伏に富んだ登山道では、ポールを使うことでバランスを保ちやすいので余計な筋力を使わずに済みます。
腕の筋肉痛が気になる方はアームカバーをしてみるのもいいかもしれません。
日焼け対策メインでのおすすめ紹介記事ですが、筋肉をサポートしてくれるアームカバーも紹介していますので、こちらもご覧ください。
⑤行動食を食べる
行動食を食べることで筋肉痛を予防出来るのか疑問に思うでしょう。
登山は長時間の有酸素運動で多くのエネルギーを消費します。
エネルギーを消費したまま補給しないで登り続けると、まず栄養素の糖質が使われます。
それが空っぽになると次にタンパク質が消費されます。
タンパク質はご存じかと思いますが、筋肉を作ってくれる栄養素です(もちろん他にもたくさんの機能があります)
このタンパク質が不足すると筋力量の低下を招いたり、筋肉の修復が遅れてしまい、筋肉痛の原因になってしまいます。
そうならないために行動食を補給することで、タンパク質不足を防ぎ、筋肉痛の予防になるのです。
行動食はタンパク質を消費しないよう、まず糖質を補給することが重要です。
その上で、タンパク質やアミノ酸などの筋肉を作る・修復効果のある栄養素を取り入れましょう。
そもそも行動食とは何ぞやと言う方やおすすめの行動食を知りたい方はこちらをご覧ください。
登山後に行う筋肉痛にならないための対策
登山だけではなくスポーツ全般に言えるのですが、運動後の身体のケアは非常に大切です。
このアフターケアをするかしないかで、疲労や筋肉痛の程度が大きく変わってきます。
難しいものは無いので、辛い筋肉痛を味わいたくない方はぜひ実践してみましょう!
①身体に必要な栄養(食事)を摂る
登山後には特に糖質とタンパク質が必要になります。
「行動食を食べる」の項でも説明しましたが、登山後は筋肉のエネルギー源である糖質(グリコーゲン)が枯渇した状態になっています。
まず土台になる糖質を補給しない限り、他の栄養素を上手く身体に取り込めませんので、白米や麺類など糖質が多く含まれている食材を食べましょう。
その上で、筋肉を作り補修する役割があるタンパク質(アミノ酸)も大切です。
タンパク質は豚肉や鶏肉、魚などの食材から摂取出来ます。
登山後の食事ではこれらの食材を多めに食べるよう気にしてみましょう。
ただし、タンパク質は必要な量を食べるだけで補うことが難しいです。
なので、食事にプラスしてアミノ酸のサプリやプロテインから摂取することもおすすめします。
②お風呂に入り血液の巡りを良くする
お風呂に入る事は筋肉痛予防にとても効果的です。
入浴の作用の1つ「温熱効果」によって体温が上がり、新陳代謝が活発になり血液の巡りが良くなることで、老廃物や疲労物質などが体外へ排出され、痛みの改善や疲労回復につながります。
筋肉痛を軽減するにはぬるめのお湯(40℃くらい)に10〜15分浸かるのが理想です。
また、筋肉痛は「炎症」です。
筋肉を冷やす「アイシング」をすることで炎症を抑えたり、痛みを和らげたりすることが出来ます。
シャワーで冷水を浴びたり、温泉であれば水風呂に入り”交代浴”をすることで、アイシング効果が得られ、筋肉痛を抑えることが出来ます。
登山後は温泉に行く人も多いでしょう。
家に帰ってからゆっくりお風呂に浸かるのもいいですが、温泉には家では味わえない雰囲気や泉質による筋肉痛予防効果があります。
温泉に行く場合は、登山口の近くの温泉に立ち寄ることも多いと思いますが、その際は下山後30分程度は休憩してから入浴しましょう。
登山直後に入浴すると、酸素の供給や疲労物質を排出する機能が低下して、筋肉痛になる可能性が高まってしまいます。
③筋肉を緩めるストレッチをする
登山前では「動的ストレッチ」をストレッチをおすすめしましたが、登山後のストレッチには「静的ストレッチ」をおすすめします。
静的ストレッチとは、いわゆる皆さんが「ストレッチ」と聞いて思い浮かべるようなやり方で、反動や弾みをつけず同じ姿勢をキープしながら筋肉を伸ばし続けるストレッチのことです。
柔軟性を高めたり、可動域を広げる効果があります。
また、筋肉の緊張をやわらげ、血流を良くすることで、疲れや筋肉痛を予防することができるのが特徴です。
このストレッチを行う際は、伸ばしている箇所と呼吸を意識して、リラックスした状態で行うとより高い効果が得られます。
翌日に疲労・筋肉痛を残したくない方は、ぜひストレッチをしてみてください。
④質の高い十分な睡眠をとる
筋肉痛を治すためには十分な睡眠をとり、身体をしっかり休ませることが必要です。
登山の前日は遠出をするため早く家を出て行かなきゃいけなかったり、ワクワクして眠れてなかったり…
なので、登山後は十分な睡眠時間をとりましょう。
睡眠と筋肉痛って関係あるの?と思いますが、とても重要なんです。
横になってからの1〜3時間後は成長ホルモンの分泌が最も盛んになる時間帯です。
この成長ホルモンは筋肉の修復を効果的に促してくれます。
睡眠は疲労回復や修復の他にも、緊張した筋肉を緩める効果があります。
「睡眠の90分前には入浴する」や「就寝前にはスマホやPCを見ない」などの就寝準備をすることで、睡眠の質を上げることで成長ホルモンの分泌も活発になり、筋肉の修復効果が上がります。
- 夕食は就寝の3時間前、入浴は2時間前までに終わらせる
- 就寝前にはスマホやPCを見ない
- アルコール・カフェインの摂取を控える
また、先ほど紹介した静的ストレッチを行えば、リラックス出来てさらに睡眠の質が高まりますよ!
もしも筋肉痛になってしまったら?
ここまでご紹介した筋肉痛にならない対策を試したけれど、「辛い筋肉痛になってしまった…」という方もいるかもしれません。
そんな方はまず、身体の正直な反応ということで素直に受け入れましょう。
そして、やることはたった1つ「痛い時は無理に動かさない」ことです。
「筋肉痛は動かした方がいい」という話も耳にするかと思いますが、それは痛みが落ち着いてきたらです。
痛みが激しいうちは、必要な栄養を補給をして、たっぷり筋肉を休ませてあげましょう。
痛みが落ち着いてきたら、徐々に次の登山に向けて筋トレやランニングを再開してみてください!
まとめ
以上で、登山で筋肉痛にならないための対策の説明を終わります。
全部取り入れるのは難しいと思うので、簡単に出来そうなものから1つずつやってみてください。
きっと、筋肉痛の悪夢から解放され、登山もより楽しいものになりますよ!
それでは、おしまい!
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