雪山や残雪期の登山を始めようとすると、まず装備の値段に驚くのではないでしょうか。
アイゼン、ピッケル、ワカン、冬用登山靴。一式そろえると、10万円を超えることも珍しくありません!
全部買うべきか、借りられるものは借りるべきか。今回は、装備ごとに整理してみましょう。
「アイゼンって、レンタルでも大丈夫なの?」
「冬用の靴だけは買った方がいいって聞くけど、本当?」
今回はそんな疑問に、装備ごとに答えていきます。
- 冬用登山靴だけは、なぜ実店舗で買うべきなのか
- アイゼン・ピッケル・ワカンは、買うか借りるかをどう決めればいいか
- レンタルのセットと単品を組み合わせたときの料金差
- 実際に買ってみて分かった、装備ごとの向き不向き
この記事の対象と、経験の目安
この記事は、無雪期の登山はすでにしていて、これから雪山や残雪期の2000m級に踏み出そうとしている人に向けて書いています。

地図とコースタイムを自分で読める。無雪期の登山なら、コース選びも装備の準備もひととおり自分でできる。そのくらいの段階を想定しています。
逆に、そうした経験がまだ浅い人は、いきなり雪山用の装備をそろえる前に、まずは低山の残雪や凍結路で足慣らしをしておく方が安全です。高尾山クラスの残雪・凍結路で、チェーンスパイクを使って足慣らしをしておく方法もあります。
先に断っておくと、レンタルは装備を手に入れる方法の話であって、経験や技術、体力の代わりにはなりません。装備さえそろえば雪山に行ける、という話ではない点は、最初に押さえておきましょう。
結論——本格的に続けるなら買う。雪山講習や最初の数回はレンタルでいい
先に結論を言います。
本格的に雪山を続けていくつもりなら、装備は買った方がいい。
ただし例外があります。雪山講習に参加するときや、経験者と一緒に登り始めて2〜3回のうちは、レンタルの方が合理的でしょう。
雪山の装備は高額です。買ってすぐ「やっぱり続けない」となると、それだけでかなりもったいないことになります。続けるかどうかがまだ分からない段階では、レンタルで試してから決める。続けると決めたら、そこから買いそろえていく。この記事は、その順番で書いています。
実際にいくらになるか、先に数字で並べておきます。
| 装備 | 判断のポイント | ひとことの理由 |
|---|---|---|
| 冬用登山靴 | 続けると決めたら、実店舗で買う | アイゼンとの相性を、店で合わせる必要がある |
| 12本爪・10本爪アイゼン | 続けると決めたら買う | 講習や最初の数回は、レンタルで十分 |
| ピッケル | 続けると決めたら買う | 雪山を続けるなら、必須装備に近い |
| ワカン・スノーシュー | 続けても、頻度は人による | スタイルや行く山で出番が変わる |
| スパッツ | どちらでもいい | セットに含まれていることが多い |
| 雪崩レスキュー用具 | レンタルが中心 | 高額で、日帰りの一般ルートなら毎回は要らない |
私自身、アイゼン・ピッケル・ワカン・冬用登山靴は、全部自分で買いました。買って後悔したものはなく、逆に「借りればよかった」と思ったものもありません。
ただ、装備によって使う頻度はまったく違います。とくにワカンは、続けると決めたあとも、人によって出番の差が大きい装備です。
私の場合、ピッケルはシーズン6〜8回、多い月だと月2回は持っていきます。一方でワカンは、年に1〜2回使うかどうかです。同じ「冬装備」でも、出番の差はかなり大きいんです。
なので「ワカンは年1〜2回だから借りればいい」という単純な話ではありません。スキーで雪原を歩く人なら、ワカンより先にスキーの装備が要ります。反対に、なだらかな雪原を歩く山によく行くなら、ワカンの出番はもっと多くなるはずです。
自分の場合を考えるときは、①よく行く山に急な登りが多いか、なだらかな雪原が多いか、②スキーやスノーシューなど、ほかに浮力を確保できる装備を持っているか。この2つで見積もってみましょう。
靴とアイゼンの相性は、店で合わせる
冬用登山靴だけ「通販で先に決めない」方がいい理由は、靴とアイゼンの相性にあります。
アイゼンと登山靴の金属パーツの相性が悪いと、いったん装着できても、歩いている途中で外れることがあります。靴の形状やソールの硬さによって、合うアイゼンが変わってくるためです。
つまり、靴を先に買っても、アイゼンを先に買っても、片方だけでは決められません。どちらも実物を合わせてみないと分からない部分だからです。
私も、冬用登山靴にアイゼンを装着できるか、一度実店舗で合わせてもらいました。ネットだけで買っていたら、サイズが合うかどうか、実物を見るまで不安だったと思います。

冬用登山靴とアイゼンを別々に借りると、サイズの合わない組み合わせになるリスクがあります。やまどうぐレンタル屋の「冬用登山靴+12本爪アイゼン+スパッツ」セットなら、申し込んだ靴のサイズに合わせてアイゼンを調整した状態で届きます。それでも、届いたらすぐに自分で靴に装着して確認してください。
別々に借りる場合や、自分の靴にこの店のアイゼンだけを合わせる場合は、相性は保証されません。冬山に不慣れなうちは、別々に選ぶよりセットで借りる方が安全です。
サイズが不安なら、配送のレンタルでも試着してから使えます。利用日の3日前に届くので、届いたらすぐに履いてみてください。合わなければ連絡すれば、利用日の前日までに交換品を無料で送ってもらえます。送料や手数料はかかりません。ただし在庫がある場合に限られるので、サイズに不安があるなら早めに申し込む方が安全です。より確実に合わせたいなら、新宿店(通年営業)か河口湖店(夏季限定営業)で試着してから借りる方法もあります。
| 借り方 | 1泊2日(配送・税込) | 中身 |
|---|---|---|
| セット | 14,000円 | 冬用登山靴+12本爪アイゼン+スパッツ |
| 単品を個別に借りた場合 | 15,000円 | 同じ組み合わせをそれぞれ単品で |
セットの方が1,000円ほど安く、2泊3日で借りるとその差はさらに広がります。スパッツの分がほぼそのまま浮く計算です。
ただし、これは靴も一緒に借りる場合の話です。すでに冬用登山靴を持っているなら、セットではなく、アイゼンとスパッツだけを単品で借りる方が安く済みます。1泊2日で合わせて6,000〜7,000円ほどです。ただしこの場合、靴とアイゼンの調整はセット申し込み限定のサービスなので、相性は自分で確認してください。
新しく冬用登山靴を買う場合は、モデルによって幅がありますが、6万円前後〜10万円程度が目安です。続けると決めていない段階でここに手を出すより、講習や最初の2〜3回はレンタルで様子を見る方が無駄になりません。
アイゼン・ピッケル・ワカン、自分の使い方に合わせて選ぶ
ここからは、装備ごとに見ていきます。まずレンタル料金の目安です。
| 装備 | 1泊2日(配送・税込)の目安 |
|---|---|
| 12本爪アイゼン | 5,000〜6,000円 |
| 10本爪アイゼン | 5,000円 |
| ピッケル | 4,000〜6,000円(用途による) |
| ワカン | 3,000〜4,000円 |
①12本爪・10本爪アイゼン
アイゼンは、買っても借りても、どちらも成立する装備です。
レンタルなら1泊2日で5,000〜6,000円程度。定番モデルを買うと、3万円程度からになります。単純に割ると、5〜6回借りたあたりで、購入した場合の合計と並ぶ計算です。
雪山講習中や、経験者と一緒に登り始めた最初の数回は、レンタルで十分です。続けると決めたら、早めに買ってしまう方が結局は安く済みます。一般的に、12本爪は急な斜面やアイスバーンを含む本格的な雪山向け、10本爪はなだらかな雪山歩き中心の人向けです。
買うと決めたら、こんなモデルがあります。選ぶときの分かれ目は、靴に「コバ」と呼ばれる、つま先とかかとの溝があるかどうかです。無雪期用の登山靴には、コバが付いていないことがほとんどです。自分の靴のつま先・かかとの縁が平らか、金属の縁が張り出しているかを見れば分かります。コバがない靴には、セミワンタッチタイプのアイゼンは付きません。セミワンタッチは、かかとをレバーで固定し、つま先はベルトで留めるタイプです。
1点目は、12本爪のセミワンタッチタイプです。コバ付きのブーツ専用なので、これから冬用の登山靴も買うつもりの人に向いています。
2点目は、10本爪のストラップ式です。コバのない靴にも装着できるので、いまの登山靴のまま雪山を試したい人に向いています。
どちらを選ぶ場合も、サイズと靴との相性は、実店舗で合わせてから買ってください。通販で先に決めると、合わないまま歩いて、途中で外れることがあります。
雪山講習に参加する前や、経験者と一緒に登り始める最初の2〜3回でまだ迷っているなら、やまどうぐレンタル屋でアイゼンの料金を見る
のも手です。一度借りて、自分の靴との相性や、爪の本数の感覚をつかんでから買うのでも遅くありません。
②ピッケル
ピッケルは、雪山では基本的に必須に近い装備です。これから雪山を続けていくつもりなら、早めに買っておいた方がいいと思います。

私自身、ピッケルはシーズン6〜8回、多い月は月2回は持っていきます。雪山に行く回数が、そのままピッケルを使う回数になっている感覚です。
雪山講習に参加するときや、経験者と一緒に登り始めて2〜3回のうちは、レンタルで一度使ってみる方法もあります。1泊2日で4,000〜6,000円程度で、縦走用とアイスクライミング用では料金が変わります。買う場合は、2万3,000円〜3万円程度が目安です。
③ワカン
ワカンは、使う頻度が人によっていちばん差の出る装備です。
私自身、ワカンを使うのは年に1〜2回程度になります。スキーを持ってバックカントリーをするので、ワカンの出番自体が少ないですし、急な登りが多い山にはそもそも持っていかないことが多いからです。
反対に、なだらかな雪原を歩く山によく行く人や、ほかに浮力を確保する装備を持っていない人なら、ワカンの出番はもっと多くなるはずですね。
雪山講習中や、経験者と一緒の最初の数回は、レンタルで十分でしょう。行く山域によって最適なフレームの形状も変わってくるので、買う前に自分の行き先に合うかどうか試してみる方が安全です。1泊2日の目安は3,000〜4,000円程度です。買う場合は、1万円台前半〜2万円程度が目安です。
この記事で扱わない装備
グローブや冬用のレインウェアは、今回のスコープからは外しています。手の大きさや体格による部分が大きく、日常や低山の防寒着とも重なるためです。
雪崩レスキュー用具(ビーコン・プローブ・スコップ)も、今回は詳しく扱っていません。バックカントリー向けの装備で、日帰りの一般ルートなら毎回は必要にならないことが多いためです。買うと高額になるので、レンタルがほぼ一択に近い装備です。プローブとスコップ、ビーコンのセットで、1泊2日6,000円程度から借りられます。
よくある質問
まとめ
- 本格的に雪山を続けていくなら、装備は買った方がいい
- 雪山講習に参加するときや、経験者と一緒に登り始めて2〜3回のうちは、レンタルの方が合理的
- 冬用登山靴だけは、続けると決めたら実店舗で試着して買う。アイゼンとの相性を合わせる必要があるため
- ピッケルは、雪山を続けるなら基本的に買う装備。アイゼンは何度も行くなら5〜6回あたりで買った方が安くなる
- ワカンは、続けても使う頻度が人によって大きく変わる。自分のスタイルと行く山で見積もる
私自身、アイゼン・ピッケル・ワカン・冬用登山靴は全部買っていて、後悔しているものはありません。ただ、それは続けると決めてから買ったからです。
ここまでの目安を合計しておくと、冬用登山靴・アイゼン・ピッケル・ワカンに、スパッツや防寒グローブなど周辺装備まで足して新品でそろえた場合、必要最低限の組み合わせで合計14万円程度。ブランド名の通った中〜上位モデルでそろえると、合計20万円程度になります。「10万円を超えることも珍しくない」と冒頭で書きましたが、こだわって選ぶほど、実際にはこのくらいまで上がっていきます。事前に20万円近くかかりそうだと感じていたなら、その見積もりはおおむね合っています。
雪山の装備は高額です。続けるかどうかまだ分からないうちに買って、やっぱり続けなかった、となるのがいちばんもったいないと思います。雪山講習に参加するときや、経験者と一緒に登り始める最初の2〜3回は、まずレンタルで試してみてください。
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