「高尾山は基本要らない」の続き。では、どんな山なら要るのか
「高尾山クラスの低山なら、チェーンスパイクはふつう要らない」——そう聞いて、少し肩の力が抜けた人もいると思います。
私は1月3日に高尾山に登りましたが、霜柱はあったものの、凍って滑りそうな箇所はありませんでした。1号路のような舗装された参道を日中歩くだけなら、これくらいの体感で十分だったということです。
実際に1月の高尾山を歩いて確かめた記録は、こちらにまとめています。
では、丹沢や御在所岳、筑波山、金剛山はどうでしょうか。同じ「低山」という括りでも、話はまったく別になります。ここからは、山の名前を覚えるのではなく、条件で判断する方法を見ていきましょう。
この記事で分かること
- チェーンスパイクが必要になる3つの条件(向き・地形・時期)
- 雪が積もっていなくても凍る3つの場面
- 丹沢・御在所岳・筑波山・金剛山の実例と、情報の強さの違い

結論:山名ではなく「向き・地形・時期」の3つで決まる
結論から言うと、チェーンスパイクが必要かどうかは、山の名前だけでは決まりません。次の3つの条件で決まります。
- 向き:北向き・日陰の斜面かどうか
- 地形:標高800〜1,500m級で、沢沿いなど水分の多い区間かどうか
- 時期:主に12月末〜3月上旬かどうか(山によって差があります)
さらに厄介なことに、雪が積もっていなくても、この3つが揃えば路面は凍ります。1つずつ見ていきましょう。
チェーンスパイクが必要になる3つの条件
①北向き・日陰の斜面(同じ山でも南斜面は溶けやすい)
丹沢を例にすると、同じ稜線でも南向きの斜面は日中の日差しで雪や霜がすぐに溶けます。北向きの斜面は日が入りにくく、溶けきらないまま凍りついた状態が続きやすくなります。稜線を挟んだだけで、足元の状態がまったく違う、ということが普通に起こるわけです。

②標高・地形(800〜1,500m級、沢沿いや水分の多い区間)
正直なところ、ここで扱っているのは本格的な雪山ではありません。標高800〜1,500m級の低山〜中級山が対象です。残雪期(春先に雪が残っている時期)の高山や、12本爪アイゼンが必要になるような領域の話ではないので、そこは分けて考えてください。沢沿いや水はけの悪い区間は地面に水分が残りやすく、気温が下がると真っ先に凍ります。
③時期(主に12月末〜3月上旬。ただし山によって差がある)
目安は12月末から3月上旬です。ただし、山によって差があります。丹沢は1月ごろが霜柱中心で、軽アイゼン(チェーンスパイクのような、爪の短い軽量な滑り止めの総称)の携行が呼びかけられる時期です。御在所岳は12月中旬から3月頃までと幅があり、年による差が大きい山です。同じ時期でも、その年の天気次第で前後するでしょう。次は、雪が降っていなくても凍る場面を見ていきます。
雪が積もっていなくても凍る3つのパターン
「雪が積もっていないから大丈夫」——ここでつまずく人が多いところです。実は、雪が一切降っていなくても、路面は凍ります!
①霜柱が日中とけて、夜間に再凍結する
日中の気温で溶けた霜柱の水分が、夜のあいだに再び凍り、朝には硬い氷の膜になっていることがあります。見た目はただの土の道なので、地味に見落としやすい場面かもしれません。
②降雪直後1〜2日、踏み固められた雪(圧雪)が凍る
雪が降った直後は、他の登山者に踏み固められた部分から凍り始めます。真っ白でふかふかの新雪より、踏み跡がテカって見えるあたりのほうが、実はよく滑ります。
③濡れた落ち葉の下に凍結が隠れている
落ち葉の下に薄い氷が張っていることもあります。落ち葉の色で足元が見えにくく、意外と、踏んでから初めて気づくことも珍しくありません。ここが、本格的なアイゼンでは大げさだけれど、チェーンスパイクなら効く場面です。

【山域別】条件に当てはまる区間の実例
ここまでの条件を、実際の山に当てはめてみます。
| 山域・区間 | 標高帯 | 要否の目安 | 時期の目安 | 凍る要因(地形) | 情報の裏付け |
|---|---|---|---|---|---|
| 高尾山(1号路・6号路・稲荷山コース) | 400〜599m | 基本不要(対比の基準) | ― | 舗装路・日中は乾く | 実際に歩いた |
| 高尾山・奥高尾(陣馬山・景信山方面の縦走路) | 500〜700m級 | 携行推奨 | 積雪後数日以内の日陰斜面 | 日陰・未舗装 | 実際に歩いた |
| 丹沢(表尾根・大倉尾根) | 約1,200〜1,491m(二ノ塔・三ノ塔〜塔ノ岳、大倉尾根の花立〜山頂) | 必要 | 12月末〜3月上旬 | 北向き斜面・霜柱中心 | 自治体や山小屋が注意を出している |
| 鈴鹿・御在所岳(中道ルート) | 約1,000〜1,212m(8合目付近〜山上公園) | 必要(岩場注意) | 12月中旬〜3月頃(年による差が大きい) | 岩場・樹氷 | 取材記事はあるが古い |
| 筑波山(白雲橋コース) | 約800m級(女体山・男体山周辺) | 必要(降雪時のみ) | 降雪当日〜数日以内 | 積雪は稀だが非常に滑りやすい | 直近シーズンに実際に歩いた記録 |
| 金剛山(千早本道・山頂周辺) | 約1,000m前後 | 必要(要注意) | 12月末〜2月 | 樹氷で知られる山頂周辺 | 登山者の記録のみ |
表に無い山は、どう当てはめればいいか
ここに名前が挙がっていない山でも、向き・地形・時期の3条件は同じように使えます。次の手順で、自分が行く山に当てはめてみてください。
- コースが山の北側斜面を通るかを、地形図で確認する。国土地理院の地図やYAMAP・ヤマレコのコース図では、等高線の向きから北向きの斜面かどうかがだいたい分かります。
- コースに沢沿い・樹林帯・岩場が含まれるかを、同じ地図やコースガイドで確認する。沢の近くや、日が入りにくい樹林帯は凍りやすい場所です。
- 気象庁のサイトで、登る山に近い観測地点の前日までの最低気温と、直近の降雪・降雨の有無を確認する。氷点下の朝が続いていれば、雪が積もっていなくても凍っている可能性があります。
- ヤマレコやYAMAPで、直近の登山記録を探し、足元が写っている写真を確認する。数日前に歩いた人の記録が一番参考になります。
これらを確認しても判断がつかないときは、持っていく方に倒してください。チェーンスパイクは軽く、使わなければザックにしまっておくだけです。凍った斜面で足を滑らせるリスクの方が、荷物が1つ増えることより重いです。
表の「高尾山・奥高尾」について、奥高尾での判断はこちらに詳しくまとめています。同じ高尾山でも、内と外で結論が違う理由は、この記事を読むと分かりやすいと思います。
金剛山(千早本道の山頂周辺)は樹氷で知られる場所で、情報の中心は登山者の記録です。行くなら、当日の気温や前日までの天気もあわせて確認したほうがいいです。
御在所岳の中道ルートは岩場を含みます。凍結の時期は年による差が大きいので、行くなら当日の気温や前日までの天候を確認しておいたほうがいいです。雪道を歩くのが初めてなら、ロープウェイで山上公園まで上がり、そこから歩く距離を短くする選び方もあります。
東北の山域は、この記事の対象には含めていません。
これらの条件に当てはまる山に行く予定があるなら、そろそろ検討していい段階です。低山の日帰りで使うことを前提に、軽量な2つを紹介します。雪山用の本格的なアイゼンと違って、どちらも靴の上からゴムバンドで留めるだけの作りなので、専用の技術がなくても扱えます。
スノーライン Chainsen Trailは、2026年8月時点で¥7,600〜7,700です。つま先からかかとまで爪が並ぶ本格タイプで、1足あたり約90〜103g(ペアでM180g・L200g・XL205g)です。
エバニュー U.L.チェーンクリート EBY036は、2026年8月時点で¥5,500です。薄型・軽量重視のシンプルな作りで、1足あたり約34〜36g(ペアでSM68g・ML72g)しかありません。
選ぶならこの2つ
岩混じりの区間も歩くなら、スノーライン Chainsen Trailのほうが心強いはずです。丹沢の北向き斜面や、御在所岳の中道ルートのように、氷だけでなく岩やザレ(細かい石がゴロゴロして滑りやすい地面)も混じる区間で選びやすいタイプです。
一方、丹沢や御在所岳のような岩場が少なく、氷や霜柱が中心の区間を歩く人や、とにかく荷物を軽くしたい人には、エバニュー EBY036が向いています。薄くて軽いシンプルな作りです!まず1つ試してみたい人にも合っています。
結局、どちらが優れているというより、歩く区間に岩やザレがどれだけ混じるかで選べば十分です。対応サイズだけは、購入前に必ず確認しておきましょう。
よくある質問
Q1. チェーンスパイクとアイゼンは何が違いますか
チェーンスパイクは爪が短く、軽い雪や凍結路向けの道具です。アイゼンは爪が長く、雪山や急斜面での本格的な使用を想定した装備です。装着の手順もアイゼンのほうが多く、対応する靴を選ぶ必要があります。この記事で扱っている低山〜中級山なら、チェーンスパイクで足ります。
Q2. 高尾山の奥高尾(陣馬山・景信山方面)も同じ条件に当てはまりますか
はい。奥高尾の縦走路は非舗装路が多く、積雪後数日以内の日陰斜面は携行したほうがいい区間です。高尾山内(1号路・6号路・稲荷山コース)とは、分けて考えたほうがいいです。
Q3. 何月ごろから用意しておけばいいですか
今回紹介した山域は、早いところで12月中旬から凍り始めます。ちなみに、11月末までに用意しておくと、出発直前に慌てずに済みます。
Q4. 雪が降っていない日でも持っていくべきですか
対象の区間(北向き・日陰・沢沿い、12月末〜3月)を歩く計画があるなら、雪の予報がなくても持っていくほうが無難です。霜柱の再凍結や、濡れ落ち葉の下の凍結は、天気予報だけでは分かりません。
まとめ:自分が行く山が当てはまるか確認する
チェーンスパイクが要るかどうかは、山の名前ではなく、向き・地形・時期の3つで決まります。
- 向き:北向き・日陰の斜面かどうか
- 地形:標高800〜1,500m級で、沢沿いなど水分の多い区間かどうか
- 時期:主に12月末〜3月上旬かどうか
自分が行く山・ルートが、上の表に当てはまるか確認してみてください。当てはまるなら、紹介した2つのどちらかを選べば十分です。
チェーンスパイクだけ用意して終わりにしないための、足元と防寒のついでの確認もしておきましょう。
冷えやすい足先には、登山用靴下の厚さ別おすすめランキングも合わせて見ておくといいです。
足元以外の防寒(フリース・手袋・ネックウォーマー)は、冬の低山の服装にまとめています。
舗装路なら要らない、条件が揃えば要る——その境目さえ分かれば、判断に迷うことはなくなるはずです。
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