登山をしていると必ず出会う、顔にまとわりついてくる虫。
しつこくついてきて、時に目や鼻の中に入ってくる非常に不快な虫に、イライラしたことがある人も多いはず。これまでに私も散々被害(嫌がらせ)を受けてきました。
その不快な虫は「メマトイ」という昆虫です。
今回はそのメマトイの生態、そしてそのストレスから解放されるための対策をご紹介します!
登山で顔についてくる虫の正体は…小型のハエ「メマトイ」
メマトイとは人間の眼のまわりにまとわりつく昆虫の総称で,主に小型のハエが多いです。このコバエたちは大きさもほとんど同じで似たものが多く、判別がしにくいために一括りでメマトイと呼ぶようになったとされています。
日本には10数種類が生息していて、登山道で出会う代表的なメマトイは以下の3種です。
- クロメマトイ ー ヒゲブトコバエ。春先の樹林帯でしつこく眼にまとわりつく。
- マダラメマトイ ー 4mm前後のショウジョウバエ。樹林帯に多く生息する。
- キリガクレメマトイ ー ウシ,ウマなどに飛来するほか,人体にも好んで集まり汗や体液を舐める。
メマトイが顔、特に眼にまとわりついてくるのは涙を舐めるためと言われています。
涙にはタンパク質などの栄養が含まれており、その栄養素を得るためなどと考えられていますが、研究がほとんどされておらず実際のところは分かっていないようです。
また、メマトイは黒く光るものにも集まりやすく、目はもちろんカメラのレンズ、黒いサングラスなどにも集まる習性があります。
害はあるの?
メマトイの中でもマダラメマトイや、カッパメマトイなどが「東洋眼虫(とうようがんちゅう)」という小さな線虫(寄生虫)を媒介することが知られています。これに寄生されるとかゆみや充血、飛蚊症、慢性結膜炎などを発症します。
しかし、感染率は2~4%ほどと低く、主にイヌやネコ、タヌキなどに感染します。時に人間の目にも感染しますが、感染例はとても少ないので過度の心配は必要ありません。
メマトイが目に入った場合は水で洗い流しましょう。処置後、違和感や充血が見られるようなら医療機関を受診しましょう。
メマトイの活動時期と生息地
メマトイは春〜夏の暖かい時期に活動が活発になります。研究データが無いため正確な数は分かりませんが、特に日が昇ってから正午までが活動のピークだと思われます。
生息地は主に樹林帯や沢沿いなど、比較的標高が低い場所に多く見られます。ただし、森林限界以下(本州では2500m以下)の樹林帯ならどこでもいると思っておいてよいでしょう。
雪も溶け、だんだんと登れる高山が増えてくる5月。私は長野県と山梨県の境界にある奥秩父の名峰「金峰山」に登りに行った。
その登山では一番メジャーな大弛峠コースを選択。ここは稜線に出ると木々が少なくなるが、基本的に樹林帯を歩くことが多いコースです。
出発も少し遅めだったこと、気温が高かったこともあり樹林帯はかなり蒸されて、初めのうちから汗をかくような日だった。
アロマ虫除けスプレーをしたので心配ないかなと思っていたのも束の間、歩いてから10分もしないうちにメマトイに囲まれた。「仕方ないか…」とも思ったがその日は異常で、かなりの数が顔の周りをついてきていた。
手で振り払いながら進むもあまり効果は無く、次に虫除けスプレーをたくさん吹きかけるも汗で落ちて効果無く。結局、山頂近くの稜線に出るまでの2時間ほど、ずっとメマトイにまとわりつかれる山行になった。
私は家から近いのと好きでよく奥秩父の山に登りに行くのだが、ここら辺の山域はメマトイが多いように感じる。
メマトイを近づけない虫除け対策
メマトイはほとんど害のない虫なので対策をしなくても問題はありません。しかし、あまりの不快さにストレスが溜まり、せっかくの登山が楽しめなくなってしまっては勿体無い。
ここでは、メマトイによるストレスを減らすための対策を紹介していきます。
①虫除けスプレーをする
虫対策の基本でもある虫除けスプレーをすることで、メマトイからの嫌がらせを防ぐことができます。
なかでも、メマトイに対してはハッカ油が使われたスプレーが最も効果的です。
虫除けスプレーには「ディート」や「イカリジン」といった有効成分が入ったものや、天然成分だけで作られたものなど多くのアイテムが販売されています。どれを選んだら良いか迷う方も多いでしょう。
「ディート」や「イカリジン」といった成分が入った虫除けスプレーには、人間を見つけるための感覚器官を麻痺させて、人間がいるかどうかを分からなくさせる効果があります。そのため、人間がいることは分からないが、気づかずに近づいてきてはしまうのです。
その点ハッカ油は、そのスーッと爽やかな香りに虫を近寄せない効果があります。
吸血する虫は人間を認識させないことで刺される確率が大幅に減るので、化学成分の虫除けでも良いでしょうが、メマトイは近寄ってくること自体が(精神的に)害なので、寄せ付けない効果のあるハッカ油のスプレーをするのが一番良いでしょう。
○ハッカ油の虫除けスプレーの作り方
【用意するもの】
・ハッカ油……3〜4滴
・無水エタノール……10ml
・水……90ml
・スプレー容器①無水エタノール10mlを準備して、ハッカ油を少量(3〜4滴)垂らして混ぜます。
引用元:健栄製薬
②ハッカ油の量は、刺激が強くなり過ぎないように、少しずつお試し下さい。水を90ml入れて混ぜ合わせ、スプレーボトルに入れたらできあがり。
ハッカ油は原液では刺激が強すぎるので、肌に直接塗る場合は薄めてから使いましょう。
簡単に作れるのでぜひ試してみてください。
ハッカ油配合のアロマ虫除けスプレーでもOK
「ハッカ油だけだと匂いがきつくて嫌だ」という方は、ハッカ油のほかにリラックス効果のある、ラベンダーやレモングラスなどの精油が使われているアロマ虫除けスプレーを使うのも良いでしょう。
「パーフェクトポーション アウトドア ボディスプレー〈ハッカ〉 」は、夏になるとほとんどのアウトドア用品店で置いているアロマ虫除けスプレーの定番商品です。
世界中から厳選した天然素材のみを使用して作られ、肌にも環境にも優しいオーガニックな虫除けスプレーです。
こちらの商品はハッカ油のほかにシトロネラ、ティーツリーなどの精油も使われているため、柑橘系のさっぱりとした甘い香りもプラスされ使いやすくなっています。
何度も塗り直すことが大切
ハッカ油スプレーやアロマ虫除けスプレーは匂いが落ちると効果が切れてしまいます。経験上、登山はたくさんの汗をかくのですぐに効果が落ちてしまいます。
そのため、汗をかいたり拭いたりしたらこまめに塗り直しましょう。香りの効果を持続させることで、メマトイを常に避けることが出来ます。
自分でスプレーを作る際は、山中での塗り直しを考えてなるべく小さいボトルで携行性に優れたものにしましょう。
②虫除けネットを装着する
害はないのでやりすぎ感は否めませんが、顔の周りを覆う虫除けネットをすることでメマトイの顔へのアタックを完全に防ぐことが出来ます。
最近ではかぶるタイプの虫除けネットの他に、帽子に装着済みのタイプもあります。
上記の商品は、高い虫除け効果のある加工を施しながら取り外し可能なシェード(ネット)もついている、メマトイ対策にはバッチリの帽子です。
ネットが不要な時は、取り外して普通の帽子としてお使い頂けるのでおすすめです。
③メガネやサングラスをかける
「虫除けネットはチョット…」という人は、メガネやサングラスをかけるだけでも、目に入るメマトイを防ぐことが出来るのでおすすめです。
私自身、大量のメマトイにまとわりつかれて耳や鼻の中に入ったことは何度もありますが、メガネをかけているおかげで目に入ったことはほとんどありません。
効果は実証済みなので、目への侵入が気になる方はぜひ試してみてください。
※メマトイは黒いものに寄ってくる習性があるため、暗めのサングラスをしていると寄ってくる場合があります。
④こまめに汗を拭く
汗をかくとそれを舐めるメマトイが近づいてきたり、アブやブヨなどの虫も引き寄せてしまいますので、汗をかいたらなるべくこまめに拭きましょう。
特にメマトイの多い樹林帯では、湿気や熱がこもりやすく汗をたくさんかきます。汗をかくと虫除けスプレーの効果も落ちてしまい、その隙にメマトイを引き寄せてしまいます。
一度近寄ってくるとなかなか離れてくれませんので、こまめに汗を拭きつつ虫除けスプレーも塗り直しましょう。
“汗をかかないように登る”というのもメマトイを引き寄せない一つの手かもしれません。
⑤樹林帯を素早く抜ける
メマトイは主に樹林帯に生息しています。そのため、樹林帯を素早く抜けることができればメマトイの被害を最小限に抑えることが出来ます。
ただし、急いで登って怪我をしたり、体力を使い切ったりしないように気をつけましょう。
また、樹林帯の区間が比較的短いところを選んだりするのも対策の1つとなります。
早い時間帯に出発するのもおすすめ!
研究機関での詳しい調査結果などはありませんが、これまでの経験上、日が昇って樹林帯が温められるとメマトイの活動が活発になるように思います。
早朝にメマトイが気になったことはそれほどありませんので、樹林帯が長い山などでは早朝に出発すると良いでしょう。
おわりに
以上、登山で顔にまとわりついてくる虫「メマトイ」の生態とその対策の解説でした!
害はないけど非常に不快なメマトイ。対策をして近寄ってこなくなれば、ストレスなく登山を楽しめるでしょう。この記事を参考にメマトイ対策をしっかり行い、快適な登山を楽しんできてください。
それでは、おしまい!
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