富士山登山の服装|必要なのはこの9点!【着るタイミングも解説】

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「登山は重ね着が大事」——聞いたことがある、という方は多いと思います。

でも、実際に何を、どれだけ持っていけばいいのかとなると、はっきり答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。

ベースレイヤー、ミドルレイヤー、防寒着……

名前は聞いたことがあっても、結局どれを何枚そろえればいいのかが分からないまま検索している方が多いと思います。

「8合目で寒くて持っている服を全部着たのに、まだ寒かった」という声もよく聞きます。多くの場合、原因は服の量ではなく、着るタイミングにあります。

この記事ではまず、富士登山に必要な服と小物を全部リストにします。そのうえで、出発から下山まで、場面ごとに何を着て、何を脱ぐかを順番に説明していきます。

「重ね着って結局、何枚必要なの?」

「8合目で全部着たのにまだ寒かったって聞いたけど……」

「汗をかいたら逆に体が冷えるって本当?」

今回はそんな疑問についてお答えしていきます。

この記事で分かること
  • 富士登山で必要な服・小物の全体リスト
  • 出発時・登行中・八合目以降・ご来光待ち・下山、5つの場面で何を着るか
  • 八合目の気温と、風による体感の下がり方を実際に計算した数字
  • 低体温症のサインと、その手前で気づくポイント

服装以外の持ち物は、富士登山の持ち物を全部リストにした記事で確認できます。まずは服装から順番に見ていきましょう。

目次

富士登山で着る服、全部リスト

まず全体像です。富士登山で服装として必要になるものは、次の9つです。これで全部です。出発から下山まで、途中で必要になるものも含めて、一度に並べます。

富士登山で着る服 全9点 1 ベースレイヤー 肌に一番近い、汗を乾かす1枚 2 ミドルレイヤー 体温を保つ、中間の1枚 3 防寒着 八合目から先で欠かせない 4 アウター(レインウェア) 風雨を防ぐ、いちばん外側の一枚 5 手袋 インナー+アウターの重ね付け 6 ネックウォーマー・バフ 首元を覆うだけで体感が変わる 7 耳まで覆える帽子 耳を出さないタイプを選ぶ 8 厚手の登山用靴下 冷えと靴擦れ、両方を防ぐ 9 防寒インナー 保温の土台になる、最後の1枚
本文で紹介した服・小物9点をまとめた図解(自作)。オレンジ色の2点は、八合目から先で特に欠かせなくなるものです。

選び方のポイントは、このあと順番に説明します。価格まで紹介するのは、価格帯に幅が出やすい小物5点です。なお、服そのものではありませんが、ご来光待ちの防寒には使い捨てカイロを使う人も多く、注意点とあわせて後ほど紹介します。

そもそもベース・ミドル・アウターとは

くわしい選び方の話に入る前に、基本だけ触れておきます。

登山の服は、肌に近い順にベースレイヤー(汗を吸って乾かす下着)ミドルレイヤー(保温する中間着)アウターレイヤー(風雨を防ぐ上着)の3層で考えるのが基本です。綿素材は乾きが遅く、汗冷えの原因になるので避けます。化繊かウールを選んでください。

ベースは化繊やメリノウールのTシャツ、ミドルはフリースや薄手のダウン、アウターはレインウェアが兼ねます。綿の普段着やジャージでは汗冷えの原因になるので、この3層だけは登山用のものを用意しておくと安心です。すでに登山用ウェアを持っている場合は、その中から選べば十分です。持っていない場合は、後述するレンタルで一式そろえる方法もあります。

ここまでの3層は、主に上半身の重ね着の考え方です。アウター(レインウェア)は、ジャケットとパンツが上下セットになっています。下半身にもこのパンツが必要です。上下がつながったポンチョ型ではなく、動きやすい上下セパレートタイプを選んでください。雨具の詳しい選び方は、冒頭でご紹介した持ち物のチェックリスト記事にまとめています。

基本の考え方はここまでです。次の見出しから、9つそれぞれの選び方を順番に説明します。

それぞれの服、選び方と特徴

ここからは、先ほどのリストを上から順に、なぜ必要か・選び方を見ていきます。価格の目安は、小物のところであわせて紹介します。

ベースレイヤー・ミドルレイヤー⋯汗冷えを防ぐ服選び

化繊の速乾Tシャツに、薄手のミドルレイヤーを合わせるのが基本です。綿のTシャツは避けてください。汗を吸うと乾きにくく、あとで冷える原因になります。

防寒着とアウター⋯八合目から欠かせない理由

防寒着はフリースまたはダウンが定番で、ミドルレイヤーの上に重ねて着ます。ダウンは軽くて暖かい一方、濡れると保温力が落ちやすい特性があります。

八合目(標高およそ3,200m。山小屋が連なる区間の目安の数字です)に近づくと、気温は五合目とはっきり変わってきます。

山では、標高が100m上がるごとに気温はおよそ0.6℃下がるとされています。かりにふもとの気温が30℃だった日を考えてみます。八合目は標高約3,200mなので、単純計算で約19.2℃下がり(3,200÷100×0.6)、10.8℃前後という計算になります。

この時点でも真夏の格好では厳しい数字ですが、実際にはもう一段階、体感が下がります。です。

富士山頂ではもっとも風が穏やかな8月でも、平均風速は秒速7.4mあります。風は1m強まるごとに、体感温度をおよそ1℃下げるといわれています。この数字をそのまま当てはめると、体感はさらに7℃前後下がり、実際に肌で感じる寒さは3℃前後まで落ち込む計算になります(10.8-7.4)。あくまで平均的な条件を当てはめた筆者の概算です。使っている風速は富士山頂の8月の平均値で、八合目で実測したものではありません。実際の気温・風速はその日や場所によって変わります。

10.8℃という気温の数字だけを見て「思ったより大丈夫そう」と判断するのは危険です。風が吹けば、体感はそこからさらに冷え込みます。

着る順番も大事です。防寒着は、ベース・ミドルの上、いちばん外側のレインウェアの下に着ます。雨や強風のときにレインウェアを脱いで防寒着だけにしてしまうと、風を防ぐ層がなくなり、逆に体感は下がります。

山小屋の前に立つ、防寒着や雨具を着込んだ登山者たち
八合目より上は、防寒着や雨具を重ねた服装が基本になります。写真:Fabio Achilli, Wikimedia Commons / CC BY 2.0

手袋・ネックウォーマー・帽子・厚手靴下・防寒インナー⋯体温を逃さない小物

八合目の入口では、防寒着に加えて次の小物も一気に身につけます。

  • 手袋(インナー+アウターの重ね付け)……指先は体の中でもとくに冷えやすい部分です
  • ネックウォーマー・バフ……首元を覆うだけで、体感がかなり変わります
  • 耳まで覆える帽子……ニット帽など、耳を出さないタイプを選びます
  • 厚手の登山用靴下……足先の冷えと靴擦れの両方に効きます
  • 防寒インナー……化繊かメリノウール素材のもの。ここも綿は避けます

手袋やネックウォーマーは「あったら安心」ではなく、低体温症のリスクを下げるための必須装備として、必ず用意してください。

手袋は、インナー用の薄い手袋の上にアウターグローブを重ねると、指先の感覚を保ちながら防寒できます。厚手のアウターグローブ1枚だけだと、スマートフォンの操作やストックの握りが難しくなることがあるためです。靴下も同様に、薄手のインナーソックスの上に厚手のトレッキングソックスを重ねると、冷えと靴擦れの両方を防ぎやすくなります。

小物必要な理由目安価格帯(モンベルの場合)
手袋(アウター)指先は冷えやすく、動きにくくなると行動そのものに支障が出る3,800〜5,500円ほど
ネックウォーマー・バフ首元の露出を減らすだけで体感が変わる2,400円ほど
耳まで覆える帽子頭部・耳からの熱の放出を防ぐ2,400〜4,400円ほど
厚手の登山用靴下足先の保温と靴擦れ防止を兼ねる2,090〜3,960円ほど
防寒インナーベースレイヤーの上に着る、保温の土台になる1枚4,620〜6,050円ほど
モンベル公式オンラインストアに掲載の価格帯(税込)を集計(2026年8月時点)。他社製品では価格が変わります。素材・グレードによっても幅があります。

防寒着をまだ持っていないなら、レンタルの7点セットに最初から入っています。フリース1枚を単品で買うより、装備一式まとめて借りたほうが早いという人も多いと思います。

出発から八合目まで、着脱のタイミング

服装は分かりました。ここからは、それをいつ着て、いつ脱ぐかを順番に確認していきます。登山中は、歩くこと自体が発熱になります。じっとしているときと同じ服装で歩き始めると、途中で汗だくになってしまいます。

場面気温・体感の目安着るもの着る/脱ぐタイミング
①出発時
五合目
ふもとの気温とほぼ同じベース+薄手ミドル「少し肌寒い」で歩き出す
②登行中体を動かす分、体感はやや上がるベースのみ〜+薄手ミドル暑いと感じる少し手前で脱ぐ
③八合目以降
標高約3,200m
10.8℃前後
風を含めるとさらに下がる
ベース+ミドル+防寒着+アウター八合目の入口で一気に着る
④ご来光待ち③と同じか、それ以下③に手袋・ネックウォーマーなどを追加立ち止まる直前に着る
⑤下山標高が下がるほど上がっていく防寒着から順に脱ぐ体が温まってきたら1枚ずつ
気温の欄は、ふもと30℃の日を想定した筆者の計算です(計算の詳しい過程は、前の章の「防寒着とアウター」で説明しています)。実際の気温はその日の天候によって変わります。

出発時(五合目)は涼しい服装で歩き出す

五合目の気温は、ふもとの市街地とそれほど変わりません。ここで「山だから」と厚着をすると、歩き出してすぐに汗をかくことになります。「ちょっと肌寒いかな」と感じるくらいが、歩き出しにはちょうどいい服装です。ベースレイヤーに薄手のミドルレイヤーを羽織る程度で十分です。

富士山五合目の登山道を歩き出す登山者。薄手の服装で歩いている
五合目はふもととほぼ同じ気温。薄手の服装で歩き出すのがちょうどいいタイミングです。写真:Fabio Achilli, Wikimedia Commons / CC BY 2.0

登行中は「暑くなる少し手前」で脱ぐ

歩いているうちに体が温まり、汗ばんできます。ここで脱がずに我慢すると、汗が生地にたまり、休憩で立ち止まった瞬間に一気に体を冷やします。濡れた生地から水分が蒸発するときに、体温を奪っていくためです。これがいわゆる汗冷えです。

目安は「暑い」と感じてからではなく、「そろそろ暑くなりそうだな」という少し手前です。ジッパーを開けて熱を逃がす、ミドルレイヤーを脱いでザックにしまう、といった小さい調整をこまめに繰り返すイメージです。

脱いだ服はザックの奥にしまい込まず、すぐ取り出せる場所に入れておきましょう。八合目に近づくと、また着ることになります。

休憩のたびに服を調整する、というと面倒に感じるかもしれません。ただ、山小屋に着いてから汗冷えで震えるより、歩きながら小まめに1枚脱ぐほうがずっと楽です。立ち止まって着替える数十秒を惜しまないことが、結果的に体力の消耗を防ぎます。

八合目の入口で、防寒着を一気に着る

先ほど計算した通り、八合目からは体感3℃前後まで下がります。レインウェアは「雨の日だけ」ではなく、風を防ぐ最後の1枚として、八合目以降は着たままにしておくのが基本です。八合目の入口で、防寒着・手袋・ネックウォーマー・帽子などを一気に着てください。

ご来光待ちから下山まで、着脱のタイミング

ここまでで、出発から八合目に着くまでの流れを説明しました。ここからは、ご来光待ちから下山までを見ていきます。

ご来光待ちは、動かない時間に備える

歩いている間は、体を動かすこと自体が熱を作ります。ところがご来光を待つ間は、山頂や八合目付近で立ち止まったまま、日の出まで動きません。熱を作る手段がなくなるということです。

八合目以降で着た服に、さらに使い捨てカイロなどを足して備えておくと安心です。ポケットに入れるだけでなく、背中や腰に貼るタイプを併用する人もいます。

ご来光を待つ登山者たちのシルエット。日の出の光の中、立ち止まって待っている
ご来光を待つ時間は体を動かさないぶん、その日いちばん冷え込みます。写真:Samuel Kosoba, Wikimedia Commons / CC BY 3.0

低体温症のサインを知っておく

低体温症初期は全身の震え・悪寒、眠気、歩行がヨロヨロする状態。ここで気づいて対処できるかどうかが分かれ目です。

震えが止まっても、回復ではない

症状が進むと意識が薄れ、震えが止まり、立っていられなくなります。震えが止まるのは体が楽になったからではなく、震えて熱を作る力そのものが失われているサインです。さらに進行すると、昏睡状態や心肺停止に至ることもあります。ここまで進むと、自力での対処は難しくなります。

一緒にいる人の様子がおかしいと感じたら、我慢させずに、暖かい場所へ移動する・防寒着を足す・行動を止めるといった判断を早めにしてください。意識がはっきりしない、震えが止まっているなど症状が進んでいる場合は、自分たちだけで対処しようとせず、近くの山小屋のスタッフや周囲の登山者にすぐ助けを求めてください。

予防のほうが対処より簡単です。ご来光待ちの間は、風が直接当たらない岩陰や山小屋の壁際に寄るだけでも、体感はかなり変わります。カイロを貼るなら、太い血管が通る首・脇・腰まわりに当てると、体を温める効率がよくなるといわれています。ただし、日本カイロ工業会は、カイロを服の上から使い肌に直接貼らないこと、同じ場所に長時間当て続けないことを注意点として挙げています。ご来光待ちのように同じ姿勢で長時間動かない時間は、低温やけどが起きやすい条件でもあります。熱いと感じたら、すぐに位置をずらすかはがしてください。

ご来光待ちの寒さに備える装備が心配なら、レンタルの料金とセットの中身を確認できます

下山は逆順に脱いでいく

山頂やご来光待ちの場所から下り始めると、標高が下がるにつれて気温は上がっていきます。歩くことでも体温が上がるので、今度は着すぎが体の熱くなりすぎや汗冷えの原因になります。

目安は、登りのときと逆の発想です。汗ばんできたら、アウター→防寒着の順に1枚ずつ脱いでいきます。八合目を過ぎたあたりで防寒着を脱ぎ、五合目に近づく頃にはベースレイヤーに近い軽装に戻る、というイメージです。

脱いだ服はすぐしまい込まず、休憩のたびに様子を見ながら調整していくと、下山中も快適に過ごせます。

下山中は気持ちが緩みがちですが、標高が下がりきるまでは気温の変化が続いています。五合目に着くまでは油断せず、こまめに体感を確認しながら降りることをおすすめします。

よくある質問

女性は服装で気をつけることがありますか?

3層で考え、場面ごとに着脱するという基本の考え方は、男女で変わりません。ただ、冷えやすさには個人差があります。防寒インナーの枚数で微調整すると、自分に合った量を見つけやすくなります。

雨具は防寒着の代わりになりますか?

雨具には風を防ぐ役割があるので、ないよりはましです。ただし、保温そのものは防寒着の役目です。雨具だけで八合目以降の寒さをしのぐのはおすすめしません。

ルートによって服装は変わりますか?

八合目付近の標高は、どのルートでもほぼ同じです。着るものが変わるということはありません。

重ね着は何枚くらいを目安にすればいいですか?

枚数よりも「今どの場面にいるか」で考えるほうが分かりやすいです。八合目以降なら、ベース・ミドル・防寒着・アウターの4枚が基本の重ねになります。そこに手袋やネックウォーマーなどの小物が加わるイメージです。

まとめ

服装は、ベース・ミドル・防寒着・アウター・手袋・ネックウォーマー・帽子・厚手の靴下・防寒インナーの9点をそろえれば十分です。そのうえで、場面に応じて次のように着脱します。

  • ①出発時は涼しめの服装で歩き出す
  • ②登行中は暑くなる少し手前で脱ぐ
  • ③八合目以降は防寒着・手袋・ネックウォーマー・帽子を一気に足す
  • ④ご来光待ちはさらにカイロなどを追加し、動かない時間に備える
  • ⑤下山は逆の順番で、汗ばんだら1枚ずつ脱いでいく

場面ごとに着るものが変わることさえ分かっていれば、当日の判断はそれほど難しくありません。

装備全体のチェックリストは持ち物のチェックリスト記事にまとめています。服装と合わせて、出発前に確認しておいてください。

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