雪の付いた秋冬の山を歩こうとすると、必ず出てくるのが「チェーンスパイクにするか、12本爪アイゼンにするか」という悩みです。
ネットで調べると「12本爪を買っておけば安心」という声もよく見かけます。ただ、実はその前に確認しておかないといけないことがあります。
自分の登山靴に「コバ」と呼ばれる出っ張りがあるかどうかです。これがないと、そもそも装着できない12本爪もあります。先に自分の靴を確認しておかないと、せっかく選んだアイゼンが届いても装着できず、買い直しになることもあります。
「とりあえず12本爪を買っておけば間違いないですよね?」
「チェーンスパイクと10本爪、12本爪って結局どう違うんですか?」
今回は、この2つの疑問に順番に答えていきます。
- チェーンスパイクと12本爪、どちらを買うかは何で決まるのか
- 自分の登山靴に「コバ」があるかどうかの確認手順
- チェーンスパイク・10本爪・12本爪、3つの違いと選び方
- 実際に両方を持って行くようになった理由
この記事は、無雪期の登山はすでにしていて、これから雪の付いた山にも足を伸ばそうとしている人に向けて書いています。登山靴はすでに持っている前提で、初めて用意するのは雪山用の滑り止め、という段階です。
結論:まず見るのは「12本爪かどうか」より、自分の登山靴
先に結論を書きます。
チェーンスパイクか12本爪かは、あなたの登山靴に「コバ」と呼ばれる出っ張りがあるかどうかで、選べる範囲がほぼ決まります。
コバとは、つま先やかかとの側面で、靴底が甲の生地よりも外側に一段張り出している部分のこと。張り出した下側は、指でなぞるとへこんだ溝になっているのが分かります。登山靴の種類によって、この出っ張りがあるものとないものがあります。
12本爪アイゼンの中には、このコバに引っかけて固定するタイプがあります。コバのない靴だと、そもそも装着できません。「12本爪さえ買っておけば間違いない」というのは、自分の靴にコバがある場合の話なんですね。
無雪期の登山でよく使われているハイキングブーツの多くには、このコバが付いていません。歩きやすさや軽さを優先した作りになっているためです。反対に、冬用の登山靴はソールが硬く、コバが付いているものが多くなります。まずは次の章で、自分の靴を確認してみましょう。
なお、雪山に行く頻度がまだ読めない、年に1〜2回になりそうだという段階なら、買う前に一度借りて試す方法もあります。アイゼンを買うかレンタルで試すか、装備ごとに整理した記事も合わせてどうぞ。
自分の登山靴に「コバ」があるか、見分け方
①コバとは何か
コバは、靴底と甲の生地をつなぐ縁の部分が、外側に一段張り出している部分のことです。張り出した下側は、へこんだ溝のようになっています。つま先側とかかと側、それぞれに独立してあります。
アイゼンの装着方式には、大きく分けて次の3種類があります。
- ワンタッチ式:つま先・かかとの両方にコバが必要
- セミワンタッチ式:かかとのコバのみ必要(つま先はコバがなくても対応できます)
- ストラップ式:コバは不要
この記事で紹介する12本爪(ペツル バサック レバーロックユニバーサル)は、セミワンタッチ式です。かかとにコバがある靴が前提になります。すべての12本爪がコバ付き専用というわけではなく、ストラップ式の12本爪も存在するので、その点は分けて考えましょう。
②自分の靴で確認する3つの手順
手順は次の3つです。
- 靴のつま先の側面を見て、靴底が甲の生地よりも外側に張り出していないか確認する
- かかとの側面も同じように見て、張り出しがないか確認する
- 見ただけで分かりにくいときは、指で縁をなぞって段差を触って確かめる
それでも判断がつかないときは、購入した店やメーカーに、型番を伝えて確認するのが確実です。無雪期用のハイキングブーツは、コバがないことがほとんどですが、3シーズン用のモデルの中には浅いコバが付いているものもあります。「絶対にない」と決めつけず、一度は自分の目と手で確認しておくと安全です。
チェーンスパイク・10本爪・12本爪、3つを比較する
コバの有無を確認できたら、次は3つの選択肢を比較してみましょう。表の「対応する登山靴」の列を見れば、自分の靴で選べるものがすぐに絞れるはずです。
| 商品 | 対応する登山靴 | 装着方式 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| スノーライン Chainsen Trail(チェーンスパイク) | コバ不要。ほぼすべての靴に装着可 | ゴムバンドを伸ばして履かせるだけ | 約¥7,600〜7,700 |
| BD コンタクトストラップ(10本爪) | コバ不要。ストラップ式 | ベルトで足に締め付ける | 約¥25,000〜27,500 |
| ペツル バサック LLU(12本爪) | かかとのコバが必須(セミワンタッチ) | レバーでかかとをロックする | 約¥28,000〜30,000 |
チェーンスパイクの価格は、10本爪・12本爪のおよそ3分の1から4分の1。値段だけ見るとチェーンスパイクが優しく見えますが、値段で選ぶものではありません。求められる路面の状況が、そもそも違うからです。
コバが無い登山靴の人が選ぶ基準
①チェーンスパイクで足りる場面
チェーンスパイクは、雪が積もっていない霜柱や凍結、締まった雪道程度なら十分に対応できます。ゴムバンドで固定するタイプなので、コバの有無を気にせず、いまの登山靴にそのまま使えます。
日帰りの低山を中心に歩いているなら、チェーンスパイクで足りる場面がほとんどです。低山でどんなときにチェーンスパイクが必要になるかは、日帰りの低山でチェーンスパイクが必要になる条件をまとめた記事で詳しく整理しています。

スノーライン Chainsen Trailは、約¥7,600〜7,700です。1足あたり約90〜103g(ペアでM180g・L200g・XL205g)と軽く、驚くほどかさばりません!コバの有無を問わず、どんな登山靴にも装着できます。ゴムバンドで固定する分、氷が硬く張った急斜面では爪の食い込みが甘くなる場面もあります。あくまで、なだらかな雪道や凍結対策としての装備です。
②10本爪ストラップ式が必要になる場面
斜度のある雪渓や、しっかり凍った雪面を歩くとなると、チェーンスパイクの爪の長さでは心もとなくなってきます。かといって、コバのない登山靴だと、セミワンタッチ式の12本爪は装着できません。
ここで選択肢になるのが、ストラップ式の10本爪です。コバの有無に関わらず、ベルトで固定するので、いまの登山靴のまま本格的な雪山用の爪を使えます。
BD コンタクトストラップは、約¥25,000〜27,500です。コバのない一般的な登山靴でも装着できる、数少ない10本爪の選択肢です。私自身は10本爪を持っていないので、使い心地についてはお伝えできません。コバのない靴でも本格的な爪を使える選択肢として紹介しています。
なお、この製品は日本国内の取り扱い代理店が切り替わる時期にあたり、販売店によって在庫の状況に差が出ています。購入前に、在庫の有無を必ず確認してください。
コバがある登山靴の人が選ぶ基準(12本爪)
①セミワンタッチ対応の条件
コバ付きの冬用登山靴を持っている、またはこれから買うつもりなら、セミワンタッチ式の12本爪が選択肢に入ります。かかとをレバーで固定するので、着脱がしやすく、しっかり足に密着します。

今回紹介するペツル バサック レバーロックユニバーサルは、かかとにコバがある靴が前提です。約¥28,000〜30,000です。3つの中では最も重く、価格も高くなりますが、その分足への固定力は高くなるでしょう。コバの形状は靴によって細かい違いがあるので、通販だけで決めず、可能であれば自分の靴を店に持ち込んで装着できるか確かめてから買ってください。
②本気で通うなら12本爪を選ぶ理由
急な雪渓や凍った斜面、雪が積もった尾根を本格的に歩くつもりなら、爪の本数が多く、足全体をしっかり固定できる12本爪の方が心強いです。これから雪山に本格的に通うつもりで、冬用の登山靴も新しく買うなら、靴とアイゼンの相性を合わせて選べるので、12本爪から検討する方が話が早いです。
ただし、傾斜が何度から12本爪が必要になる、という具体的な数字の基準はメーカー側にもありません。その代わりに何を見て判断しているか、次の章で見ていきましょう。なお、こうした斜面を安全に歩くには、アイゼンだけでなくピッケルの使い方や雪山ならではの歩き方の経験も欠かせません。ここから先は、道具選び以上に経験がものを言う領域です。
両方持って使ってみて分かったこと
私自身は、チェーンスパイクと12本爪を、それぞれ自分で買いました。10本爪だけは持っていません。
使い分けの基準にしているのは、山の傾斜と、雪や氷の硬さ。ただ、これは現地に行ってから決めるものではありません。行く前に、雪の深さや気温、ヤマレコやYAMAPに他の登山者が残している山行記録を見て、あらかじめ選んでいます。
気温が低い日が続いていれば凍結が締まって硬くなりますし、直前に雪が降っていれば柔らかい新雪が積もります。山行記録を見れば、数日前に歩いた人がどちらの装備で足りたかも分かります。山に着いてから「どっちだろう」と迷っている時点で、この準備が抜けている合図です。
もう一つ、書いておきたいことがあります。12本爪を持って行った方がいい山でも、チェーンスパイクをあわせて持って行くことがあります。チェーンスパイクは軽くて、ザックの中でもかさばらないからです。稜線に出るまでの樹林帯だけ雪が緩んでいる、下山時だけ気温が上がって条件が変わる、といった場面では、12本爪ほど本格的な爪を使うほどでもないことがあります。そういうときに、チェーンスパイクに履き替えられると、身軽に歩けます。
つまり、最初に買うのはどちらか一方でかまいませんが、雪山を続けていくと、結果的に両方持つ場面が出てきます。まずは自分の靴のコバの有無で選べる範囲を絞り、行く山に応じて最初の1つを決める。そこから先は、必要に応じて増やしていく、という考え方でいいと思います。

よくある質問
Q1. 12本爪を買うつもりですが、自分の靴で使えるか先に確認できますか?
A. できます。靴のつま先とかかとの側面を見て、靴底が甲の生地よりも外側に一段張り出している部分(コバ)があるかを確認してください。分かりにくいときは、購入した店やメーカーに型番を伝えて聞くのが確実です。
Q2. チェーンスパイクと12本爪、両方持って行くことはありますか?
A. あります。12本爪が必要な山でも、樹林帯や下山時だけ条件がゆるむ場面はあります。チェーンスパイクは軽くてかさばらないので、あわせて持って行くことがあります。
Q3. 傾斜や標高で、何本爪が必要かの目安はありますか?
A. メーカー側に、角度や標高で線引きした数字の基準はありません。行く前に雪の深さや気温、山行記録を見て、傾斜と雪や氷の硬さから判断するのが現実的でしょう。
Q4. コバのない登山靴でも、12本爪は使えますか?
A. 装着方式によります。ワンタッチ式やセミワンタッチ式はコバが必要ですが、ストラップ式ならコバがなくても装着できるモデルがあります。今回紹介したペツル バサック レバーロックユニバーサルは、かかとのコバが必要なタイプです。
Q5. 雪山用のアイゼンを買う前に、レンタルで試せますか?
A. 試せます。年に1〜2回になりそうで迷っているなら、先にレンタルで使い心地を確かめてから買うかどうか決める方法もあります。
まとめ
- チェーンスパイクか12本爪かは、自分の登山靴に「コバ」があるかでほぼ決まる
- コバは、靴のつま先・かかとの側面で、靴底が外側に張り出している部分。自分の目と手で確認できる
- コバがない靴には、チェーンスパイクか、ストラップ式の10本爪が選択肢になる
- コバがある靴、またはこれから冬用の靴も買うなら、12本爪が選択肢に入る
- 使い分けの基準は、山の傾斜と、雪や氷の硬さ。行く前に雪の深さ・気温・山行記録で判断する
- 雪山を続けると、12本爪の山でも軽いチェーンスパイクをあわせて持って行く場面が出てくる
私自身は、チェーンスパイクと12本爪を両方持っていて、行く山に応じて使い分けています。10本爪は持っていませんが、コバのない登山靴のまま本格的な爪を試したい人には、選択肢として知っておいて損はないと思います。
まずは自分の登山靴のコバを確認するところから始めてみましょう。そこで選べる範囲が決まれば、あとは行く山の傾斜と雪の状態に合わせて選ぶだけ。
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