朝、出発前にしっかり虫除けスプレーを吹きかけたのに、お昼を過ぎたころには蚊やブユが気になり始めた——そんな経験はありませんか。
実は、虫除けスプレーは汗をかいたり水に濡れたりすると、効果が落ちやすいという性質があります。長い時間歩き続ける登山は、スプレーにとって決して得意な条件ではありません。
この記事では、成分の違いそのものではなく、登山の現場でいつ・どう塗り直すかを中心にまとめました。
「朝塗ったのに、午後には虫が気になる」
「日焼け止めと虫除け、どっちを先に塗ればいいの?」
「1本のスプレーで、1日の行動は足りるんだろうか」
今回はそんな疑問についてお答えしていきます。
- 行動時間別、塗り直しの目安
- 日焼け止めと虫除け、塗る順番
- 汗で流れやすい環境との付き合い方
- ヤマビルが多い山域での選び方
登山だと虫除けスプレーがすぐ効かなくなる、と感じる理由
結論から言うと、その感覚は間違っていません。
虫除けスプレーは、水に濡れたり汗をかいたりすると効果が落ちやすいという性質があります。アブとブユの対策記事でも触れましたが、これは登山に限った話ではなく、スプレー全般に共通する弱点です。
そのうえで、登山には次の3つの条件が重なります。
- 長い時間、体を動かし続けて汗をかく
- 1回の行動が数時間から、10時間を超えることもある
- 日焼け止めを一緒に塗る場面が多い
この3つが重なるぶん、日常生活でスプレーを使うときより、効果が落ちるタイミングが早く来やすいと考えたほうが安全です。
まずは、成分の話を簡単に整理しておきます。
ディートとイカリジン、登山ならどっちを選ぶか
虫除けスプレーの効果のもとになる成分は、主にディートとイカリジンの2つです(虫除けスプレーの成分表示によく書かれている名前です)。濃度ごとの持続時間や年齢制限の細かい違いは、虫除けスプレーの選び方をまとめた記事に整理してあります。ここでは、登山という条件にしぼって、どちらが向くかだけを見ていきます。
①虫を強く遠ざけたい場面はディート
ヤマビルやアブが多い山域など、虫を強く遠ざけたい場面では、ディートの高濃度製品が選ばれることが多いです。ただしこの製品は12歳から使用できる製品で、12歳未満の子どもには使用できません(フマキラー公式製品情報より)。塗り直しの目安になる持続時間は、このあと行動時間別にまとめて紹介します。
②年齢制限を気にしたくないならイカリジン
イカリジンは、フマキラー公式によると年齢による使用・回数の制限が設けられていない成分です。家族で1本を使い回したい場合や、肌への刺激をなるべく避けたい場合に選ばれやすい成分です。
なお、アブやブユにはディート・イカリジンのどちらも有効とされています。虫の生態や刺されたときの対処は、アブとブユの記事で詳しく説明しています。
ここから先は、選んだあとの「使い方」の話に進みます。
いつ塗り直す?行動時間別の目安
虫除けスプレーの持続時間は、メーカーが公表している数字です。ただしこの数字は、屋外で長時間歩き続ける登山ではなく、日常生活を想定した目安だと考えたほうがよさそうです。
フマキラー公式の製品情報によると、イカリジン15%配合のジェル・ミストタイプは虫よけ効果が最大8時間持続、ディート30%配合のミストタイプは5〜8時間持続とされています。
この数字を、実際の登山の行動時間に当てはめてみます。
| 行動の型 | 行動時間の目安 | 塗り直しの目安 |
|---|---|---|
| 日帰り登山 | 4〜6時間 | 汗をかく行程なら、休憩のたびに1回 |
| 小屋泊1泊2日 | 1日あたり6〜8時間 | 1日1〜2回 |
| テント泊・縦走 | 1日10時間を超える日も | 1日2〜3回が目安(休憩のたびに1回に加え、行程後半でもう1回) |
持続時間の目安は5〜8時間なので、10時間を超える行動が珍しくない縦走やテント泊では、単純に割り算しても1回では足りません。上限の8時間で計算しても10時間には届かず、下限の5時間で計算すると10時間で2回、12時間近くなら3回ほどの塗り直しが必要になる計算です。つまり1日のうちに、少なくとも2回は塗り直すつもりでいたほうがよさそうです。日帰り登山でも、大量に汗をかく行程では、公式の持続時間より早く効果が薄れている可能性があると考えておいたほうが安心です。
塗り直しは、休憩のタイミングに合わせるのがやりやすいです。ミストタイプは服の上から吹きかけやすい一方、顔まわりや汗ばんだ手足に塗り直すときは、ジェルタイプのほうが扱いやすいこともあります。
休憩中にサッと塗り直すなら、こんなジェルタイプもあります。
汗・日焼け止めとの付き合い方
①日焼け止めが先、虫除けはあと
登山では、虫除けだけでなく日焼け止めも使う人が多いと思います。塗る順番に迷ったら、日焼け止めを先に、虫除けをあとに塗るのが基本です。
アース製薬が運営する「アース虫ケアセミナー」では、「虫よけ剤は、日焼け止めの上から塗りましょう。先に虫よけ剤を塗ってしまうと、虫よけ効果が弱くなる可能性があります」と案内されています。資生堂のお客様サポートページでも、日焼け止めが先、虫除けが後という順番が案内されています。
塗り直すときも同じ順番です。日焼け止めを塗り直してから、虫除けを重ねるという手順を、行動中も守ったほうがよさそうです。
②公式の持続時間は、汗をかく前提の数字ではない
先ほどの表で使った持続時間は、メーカーが公表している目安であって、大量に汗をかく状況を保証するものではありません。汗を拭いたタオルに、虫除けごと取れてしまうこともあります。
「まだ時間が経っていないから大丈夫」ではなく、汗をかいたら塗り直す、という感覚で使ったほうが安全です。
③1日で行動が終わらないときは、残量にも注意
縦走やテント泊など、1日で行動が終わらない場合は、スプレーの残量そのものが問題になることもあります。塗り直す回数が増えるぶん、小さいボトル1本では足りなくなることも考えられます。
長い行程で1本が持つか不安な場合は、大容量タイプを選ぶという方法もあります。
スプレーだけに頼らない、という選択肢
ここまで見てきたとおり、虫除けスプレーには「汗で流れる」「塗り直しが必要」という、避けにくい弱点があります。1日で行動が終わらない縦走や、虫の多い山域では、スプレーだけで乗り切ろうとすると、塗り直しのタイミングを気にし続けることになります。
そこで選択肢に入れておきたいのが、生地そのものに防虫加工がされたウェアです。スプレーのように塗り直す必要がなく、汗をかいても効果が流れ落ちる心配がありません。
長袖シャツやアームカバー、帽子など、肌の露出を減らしながら防虫加工も足せるアイテムがそろっています。防虫ウェアの種類や特徴をまとめた記事で、具体的なアイテムを紹介しています。
スプレーをやめる必要はありません。「スプレーは塗り直しが必要な場面用、ウェアは1日中効かせたい場面用」のように、組み合わせて使っている人もいます。

ヤマビルが出る山域では、選び方が変わる
丹沢をはじめ、ヤマビルが多い山域に行く予定があるなら、虫除けの選び方が少し変わります。
ヤマビル対策の記事でも触れているとおり、ディート・イカリジンのどちらも、濃度が高ければヒル除け専用のスプレーに近い効果があるとされています。目安として、ディートは10%以上、イカリジンは15%以上の製品です。
ただし、ヒルが取り付くのは足元です。腕や首だけでなく、靴とズボンの裾にも吹いておいてください。肌用のスプレーは歩いているうちに落ちてしまうので、ヒルが出る山に何度も行くなら、ヤマビル専用の忌避剤を1本持っておくほうが確実です。
丹沢に登る予定がある人は、丹沢のヒル対策の記事もあわせて確認しておくと安心です。出没しやすい時期や場所が具体的にまとまっています。
草むらや藪を歩くときは、マダニにも注意が必要です。感染症を媒介することがあるため、見つけたときの対処法や予防のポイントはマダニ対策の記事にまとめています。
よくある質問
まとめ
- 虫除けスプレーは汗で流れやすく、公式の持続時間は日常生活に近い目安として考える
- 日帰りでも汗をかく行程なら、休憩のたびに塗り直しを
- 日焼け止めが先、虫除けはあと。塗り直すときも同じ順番で
- 1日で終わらない行動やヤマビルの多い山域では、防虫ウェアという選択肢も
どの製品を選ぶか迷っている場合は、虫除けスプレーのおすすめをまとめた記事を見てみてください。汗で流れる心配を減らしたいなら、防虫ウェアの記事も選択肢に入れてみてください。



コメント